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「一か月、いなくなってさ。その後、どうなったと思う?」
「へっ……? ど、どうなったの?」
また愚門だ。そんなの、私にわかるわけがない。
握りしめたままだった、すっかり水滴も乾きぬるくなってしまった缶ジュースを、私は自分の前、布団との間に置いた。
不意に目に入った、黒いスカートからのぞくユリちゃんのひざ頭は小さくて、ストッキングをはいているとはいえ、ツルツルと美しい。私の汚い膝は、ズボンをはいていてよかったと思う。
「そこの坂道をもっと上ったところに、私たちの通った小学校があるでしょう? その脇に大きくはなかったけど、竹藪があったのを覚えてる?」
「えっ? うん、竹藪はあったけど……」
確かに、住宅街の坂をずっと上ったところに、母校である小学校はあったはずで、ユリちゃんのいう竹藪は校庭のすぐ横に茂っていたものだろう。
「その竹藪の中にね、宏樹の遺体があったの。それで……」
ユリちゃんはまた白い布に焦点を合わせると、口をつぐんだ。
「それで? 遺体が見つかって?」
ユリちゃんは変に黙るので、私はまた緊張する。すっかり濃くなって張りついたような唾をのみ込んだ。
「……その遺体なんだけど、いろいろおかしくて。警察が遺体を持っていってしまったものだから、一週間くらいかな。でも結局、死因がわからないというか、自殺なのか他殺なのかもはっきりしなくて」
「自殺か他殺か、わからない……」
一体どんな死に方をしたのか。思わず、目の前に横たわる、たぶん石田君である人の白い布を、私も見つめる。
この顔にかぶされた白い布の下、そして一枚めくった布団の中、彼はどんな姿をしているのだろう。生前と同じ姿形をした人間が横たわっているだけだと勝手に思っていたが、もしかしたら、想像とは全く違うものがそこにあるのかもしれない。
「実理ちゃん、せっかくだし、宏樹の顔を見てやって」
「へっ!?」
全く読むことのできない変なタイミングで、ユリちゃんはすっと顔にかかる白い布をめくった。
一瞬のことに、私は目をつむるどころか大きく見開く。
「はっ……あぁ……」
私に吸い込まれた空気は瞬間、確実に止まったが、すぐに口から吐き出された。
「ね? 宏樹、綺麗な顔をしているでしょ? とても死んでいるなんて思えない」
そこには、ただ眠っているだけのような、石田宏樹の顔があった。
「本当に……さっき会ったのと同じ……」
間違いなく、先ほど自販機のところで会った彼と、同一人物だった。
だが、こんなことを言っていいはずがない。
「さっき会ったのと同じ? どういうこと?」
案の定、石田君に向けられていたユリちゃんの顔はこちらに向けられ、大きく見開かれたその目玉は今にも落っこちそうだ。
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