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おばあさんはその手の拳くらいの大きさで、丸いものを渡してくる。それは一つではなく同じものがいくつも連なっているようで、どんどんおばあさんの向こう側から手渡しされ回ってくる。私も慌てて受け取り、さらに右横に座る女子大生に受け渡す。
大きな数珠だとわかった。女性の小さな拳くらいの丸い木の玉を、円になって座る人々に回しているのだ。
どこからどうやって回ってきたのかわからないが、いくらか玉は回ってきて、気付けば私は両手に持った状態で回転は止んだ。
「いーしーだー、ひろきっ!! きょうねーん、さんじゅうにぃ!!」
唐突に、円の中心で布団を前に座る、白装束のリーダー的おばさんは声を張り上げ、ジャリッジャリッとおばさん自前の数珠を鳴らす。
チーンチーンチーン!! ポクポクポクポク……
後ろに控えるおばさんはおりんを鳴らして、おじさんは木魚をたたいた。
部屋の空気がすっと変わる。
「いーしぃだぁ、ひろき!! きょうーねーんさんじゅうにっ!! ひーろーきー……なーんまーいだー……」
ユリちゃんの声だ。ユリちゃんもこの円の中、どこかに座って、大きな数珠を持っているんだ。
なーんまーいだー……なーんまーいだー……なーんまーいだー……
なーんまーいだー……なーんまーいだー……なーんまーいだー……
なーんまーいだー……なーんまーいだー……なーんまーいだー……
皆、口々に唱えだす。それに合わせ、木の玉は手から手へと渡り始めた。
どうしていいかわからない。いや、これをひたすらやるしかない。私も恐る恐る、皆と同じように、なーんまーいだーを小さく唱える。
そんなに重くはない、むしろ軽いツルッとした玉はリズムよく流れていく。
なーんまーいだー……チーン、ポクポクポクポク……なーんまーいだー……チーン、ポクポクポクポク……なーんまーいだー……チーン、ポクポクポクポク……なーんまーいだー……チーン、ポクポクポクポク……なーんまーいだー……チーン、ポクポクポクポク……なーんまーいだー……チーン、ポクポクポクポク……なーんまーいだー……チーン、ポクポクポクポク……なーんまーいだー……チーン、ポクポクポクポク……なーんまーいだー……チーン、ポクポクポクポク……
おりんと木魚は絶妙に合いの手を打ってくる。
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