壺の中

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壺の中

 散歩がしたいと思った。  気付けば、テレビ画面の右上に表示されている時刻は午前0時を過ぎていた。興味のないバラエティ番組をながめながら、そこからしばらく悩むことになる。  どこへ行けばいいのだろう。何か目的がないと……  私は普段、散歩をするような人間ではない。できれば外には出たくない。  だって、うかつに外をうろついてしまったら小学校の同級生などに出会ってしまうかもしれないし、出会わなかったとしてもどこかで私だと気付かれ、他の誰かとの話のタネにされてしまうかもしれない。  最近、あの人を見かけたけど何をしているんだろうね……なんて、知らないところで話されるなんて本当に嫌だ。  そうは言っても、なんだかんだ近所のスーパーやコンビニにはたまに行ってしまう。平日の昼間、行っても結局は誰にも会わないものだから、ちゃんと本当は気付いているのだ。  そもそも三十を過ぎた小学校の同級生たちが、地元に残り続けていることはまれだろう。  ましてや平日の昼間、健全な大人は社会に出ているはずだ。    もし、私のように何も親のために奉仕せず、実家の一室を未だに占拠し続ける同胞がいたとしても、彼らもそんなに外を出歩くことはないはずで、私と同じとは言わないが近い心持ちではあると思う。  つまるところ、誰も私に興味、関心はない。そして、私は外に出ても誰とも出くわさないということで、私はそれをわかっている……  いけない! またしょうもないことが自らの意に反して頭の中をぐるぐる巡っているではないか……!!! いつもの悪いくせだ。
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