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ルガートの声よりも先に、有凛がヴェルアスの口元を抱きしめていた。
「……う」
二人を取り囲んだうちの一頭の鋭い牙が、ヴェルアスをかばった有凛の肩に食い込んだ。食い込むと同時に溢れ出した血が、数メートル下の地面へぼたぼたと重い音を立てた。
その隙に、褐色の龍数匹が、有凛を狙ったグループを薙ぎ倒し確保した。
「有凛!」
嫌な音がして、体に刺さった異物が離れると、表情を無くし、青ざめたヴェルアスの顔が見えた。
肩が、熱い。
腕が、濡れて…、冷たい。
「…大丈夫…だって。俺、丈夫…」
有凛の目の前が、あっという間にぐにゃりと歪んだ。
「……れ」
丈夫…でもなかったかな。
…もう、終わりか?
まあ、…いいや。
帰れそうに無いし、
好きに、なりそうで、…悔しいし。
使い捨てなんて耐えられるわけ、ねーし。
これで、いいことにしよう。
うん。
「…痛ってー……」
ずる。
有凛の身体から、力が抜けた。
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