気分転換

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気分転換

「有凛ー、起きた?ご飯できてるよ。食べたらさ、買い物に付き合ってくれない?…ふふ、髪、くしゃくしゃだよ」 「ヒュア…、今日、休み?」 「そうだよ」  有凛がここへ来てしばらく経った。有凛は数日間眠れない日が続いたが、やっと数日前から眠ることができるようになり、その様子を確認したルーセルとヒュアロスはほっと肩を撫で下ろしていた。昼近くになってやっと起きてきた有凛の髪を撫でたヒュアロスが声をかけると、有凛の目が覚めたようだ。 「市場?チラッと見たことはあるけど、買い物はしたことない」 「あそこは食料品から雑貨から、何でも手に入るよ?午後からルーも休みだから、みんなで行こう」 「楽しそうだな。でも、図書館、今日は休みだろ?」 「頼まれてた資料が間に合わなかったんだって。よし。じゃあ、ご飯食べて。全部食べないと連れて行かないよ」 「…これも?嫌いなんだけど」 「そう、これも。好き嫌いしないの」 「…頑張るけど、どー見ても多いだろこれ…」 「仕方ないでしょ、有凛、好き嫌い多いから。それはね、栄養満点なの」  ここに来て、二人は、有凛に多くは聞かなかった。ただ、いつものペースで会話をし、喧嘩をするという特別でない日常に有凛も加わった程度の空気感で、有凛はようやく心の平穏を取り戻したところだ。  ヒュアロスはあまり体が丈夫でないこともあり、自宅で仕事をすることが殆どだ。そのため、有凛が一人で過ごすことは殆どなく、食事もいつも二人で仲良く食べている。 「あれ?おいしいな。これなら食べれる」 「だろー。有凛攻略レシピが一つ増えたなー。よし、じゃあデザートは」  にこにこ笑いながらデザートを用意するヒュアロスの様子は、まるで母親の雰囲気だ。 「クリームのせる?」 「山で!」 「…甘いもの好きだよねー、有凛は…」  苦手な食材を克服し、栄養満点の食事とデザートをとり終えると、久しぶりに有凛がいつもの笑顔を見せた。 「ご馳走さま!」 「はい、頑張りました」 「俺、洗い物するから」 「頼むね、僕は、洗濯物干しちゃうから。あ、ルー、お帰り」  ルーセルは扉から姿を見せると、 「有凛、ちゃんと食ったか?」 「ルー、お父さんみたいになってるよ…」 「いいんだよ、お前も楽しいんだろ」 「まあねー」  ヒュアロスは柔らかく微笑み、食器を洗う有凛を見ながら小さく笑った。
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