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「有凛、よく食べたよ。カルの葉のサラダも完食したから、ご褒美にアストロのフルーツタルトをデザートにしたら、クリーム爆盛りで、きれいに平らげた」
「アストロのフルーツタルト、最高」
「しょっちゅう行ってさ、クリーム増量してもらうでしょ?最近は店が有凛用にって、クリーム別でつけてくれるようになっちゃって。いつか、ヴィルトリアのさ、アシェも行ってみたいよねー。フルーツリキュールのケーキとかさ、ルーでも食べられそうじゃない?」
「あ、あそこの、雑誌に載ってた!うまそーだよなー。キャラメルケーキとか、眼でやられる!」
「…まとまった休みが取れたらな。日帰りできる距離じゃねえよ。飯食ったら出るか。ヒュア、俺の昼は?」
「こっち。用意してあるよ」
有凛は微笑した。
この二人は本当に仲が良い。
話をしながら食事をするルーセルの隣で、ヒュアロスが楽しそうに話しながら笑っている。時折りルーセルがヒュアロスの髪を撫でれば、ヒュアロスはくすぐったそうに肩を竦めた。普段は無愛想なルーセルは、ヒュアロスの前では自然によく笑う。
ヴェルも、あんな風に笑うっけ?
いやー、見たことないなー。
もっと、こう、大人な、…感じ?
いやルーセルたちが子どもって訳でも全然無いんだけどさ。
有凛はぼんやりと心の中で呟いた。
「んー、美味かった。これ、また作って」
「うん」
あっという間に皿を空にしたルーセルは、さっさと皿を洗うと、シャワーを浴びて着替えてきた。
「で?何買いに行くんだ。流石に本体でも二人は運べねーから、歩ける距離だぞ」
「食料品と、雑貨くらいだよ。助かるなー。荷物取ってくれる手が多いとさ」
果たして。
「…おっ前…」
ここに来て、あまりの荷物の量に、ルーセルが半ギレ気味だ。
「大丈夫だよ。うん、ここに荷物預けて…、お姉さん、これとこれと、これね。戻ったら、お代払うから取っといて。あ、あっち!有凛、行こう」
楽しそうに走っていくヒュアロスはまるで子どものようだ。
「…ヒュア、いつもあんななのか?」
「お前がいるから余計に楽しいんだろ。行ってやれよ。俺はもー疲れたわ」
確かに、普段二人でもヒュアロスは買い物は楽しそうにしているが、今日は輪がかかっている。雑貨といい、食材といい、確かに有凛とヒュアロスは好みは似ているところが多いせいか。
「あっちは雑貨」
「ほんと?行ってくる!」
有凛も楽しそうに駆けて行った。
「子どもかよ…」
溜息をつきつつ、ルーセルは生温かく笑った。
有凛が追いつくと、ヒュアロスは楽しそうに何かを選んでいた。
「何それ?」
ガラスの器に盛られた、色とりどりの石が、所狭しと並んでいる。
「石…でか!」
ヒュアロスが笑った。
「ここはね、石から削り出して、何でも作ってくれるんだ」
「何でも?」
「そう。今日はさ、デザート用のお皿が欲しくて。何色がいい?」
「何枚作るの」
「とりあえず、5枚かな?」
じゃあ、と有凛が選び出したのは、艶やかな黒、シルバー、柔らかな金、七色、淡い青の5色だった。
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