気分転換

2/4
前へ
/32ページ
次へ
「有凛、よく食べたよ。カルの葉のサラダも完食したから、ご褒美にアストロのフルーツタルトをデザートにしたら、クリーム爆盛りで、きれいに平らげた」 「アストロのフルーツタルト、最高」 「しょっちゅう行ってさ、クリーム増量してもらうでしょ?最近は店が有凛用にって、クリーム別でつけてくれるようになっちゃって。いつか、ヴィルトリアのさ、アシェも行ってみたいよねー。フルーツリキュールのケーキとかさ、ルーでも食べられそうじゃない?」 「あ、あそこの、雑誌に載ってた!うまそーだよなー。キャラメルケーキとか、眼でやられる!」 「…まとまった休みが取れたらな。日帰りできる距離じゃねえよ。飯食ったら出るか。ヒュア、俺の昼は?」 「こっち。用意してあるよ」  有凛は微笑した。  この二人は本当に仲が良い。  話をしながら食事をするルーセルの隣で、ヒュアロスが楽しそうに話しながら笑っている。時折りルーセルがヒュアロスの髪を撫でれば、ヒュアロスはくすぐったそうに肩を竦めた。普段は無愛想なルーセルは、ヒュアロスの前では自然によく笑う。  ヴェルも、あんな風に笑うっけ?  いやー、見たことないなー。  もっと、こう、大人な、…感じ?  いやルーセルたちが子どもって訳でも全然無いんだけどさ。  有凛はぼんやりと心の中で呟いた。 「んー、美味かった。これ、また作って」 「うん」  あっという間に皿を空にしたルーセルは、さっさと皿を洗うと、シャワーを浴びて着替えてきた。 「で?何買いに行くんだ。流石に本体でも二人は運べねーから、歩ける距離だぞ」 「食料品と、雑貨くらいだよ。助かるなー。荷物取ってくれる手が多いとさ」  果たして。 「…おっ前…」  ここに来て、あまりの荷物の量に、ルーセルが半ギレ気味だ。 「大丈夫だよ。うん、ここに荷物預けて…、お姉さん、これとこれと、これね。戻ったら、お代払うから取っといて。あ、あっち!有凛、行こう」  楽しそうに走っていくヒュアロスはまるで子どものようだ。 「…ヒュア、いつもあんななのか?」 「お前がいるから余計に楽しいんだろ。行ってやれよ。俺はもー疲れたわ」  確かに、普段二人でもヒュアロスは買い物は楽しそうにしているが、今日は輪がかかっている。雑貨といい、食材といい、確かに有凛とヒュアロスは好みは似ているところが多いせいか。 「あっちは雑貨」 「ほんと?行ってくる!」  有凛も楽しそうに駆けて行った。 「子どもかよ…」  溜息をつきつつ、ルーセルは生温かく笑った。  有凛が追いつくと、ヒュアロスは楽しそうに何かを選んでいた。 「何それ?」  ガラスの器に盛られた、色とりどりの石が、所狭しと並んでいる。 「石…でか!」  ヒュアロスが笑った。 「ここはね、石から削り出して、何でも作ってくれるんだ」 「何でも?」 「そう。今日はさ、デザート用のお皿が欲しくて。何色がいい?」 「何枚作るの」 「とりあえず、5枚かな?」  じゃあ、と有凛が選び出したのは、艶やかな黒、シルバー、柔らかな金、七色、淡い青の5色だった。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

907人が本棚に入れています
本棚に追加