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がささっ。
雑木林を抜けた。
岬さんはそれまでのスピードをゆるめ、俺をかかえたままそのうちアスファルトにへたりこむ。
息があらい。道行く大人たちは、ぎょっとして足を止めていた。
「きみたち、どうしたの……?」
そうお兄さんに聞かれて、おれは、岬さんの様子をうかがう。
おれを抱えながら雑木林を全力疾走するなんて無茶をしたせいで、岬さんはしゃべる余裕がなさそうだった。
うつむいたままの彼女を見て、おれは代わりに声をしぼり出す。
「変なおばさんに追われてる! 警察呼んで!」
「えっ? わ、わかった!」
そう言うと、お兄さんは慌てて携帯電話を取り出した。
これで、大丈夫だといいけど……。
ふと、おれはもう一度女子高生を見る。
うつむいたまま動かない彼女が心配になって、俺は思わず話しかける。
「……み、岬さん……?」
すると彼女は、なんとか顔をあげて、おれの方を見た。
「颯くん、ケガ、ない?」
息も切れ切れにおれにたずねる。
「べつに、ないけど……」
すると彼女は、急に天をあおいだ。
「あー、びっくりした! 颯くんが無事でよかったぁ」
今でにも寝転がらんばかりの勢いで、岬さんは言い放つ。
よかった、岬さんも大丈夫みたいだ。
そう思って、おれはふと、女子高生にお姫様だっこをされているこの状況に恥ずかしさを感じた。
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