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Ⅱ 岬(高校3年生)
「はい栗林さん、これは?」
「左、です」
「これは?」
「上です」
「じゃあ、これは?」
「シっ……、み、右です」
「はい、よく見えてますね。いつもの度数で、コンタクト用意しときますね」
そう優しく眼科のお姉さんに言われて、わたしは力なく「あ、お願いします」と呟いた。
受験本番前、最後の土曜日。
本当は勉強しなきゃいけないのに、そんな気分にもなれない。
でも遊ぶのも休むのも許されないから、行かなきゃと思ってた眼科に、朝イチで来た。
支払いを済ませ、コンタクトを受け取る。
自転車置き場まで歩く途中、さっき見た、忌々しい記号のことを思い出した。
……この時期にC判定って。
ちょっと、さすがにヤバいでしょ。
最後の模試結果を思い出しながら、どんよりとした気持ちになる。
一応テキストは持ってるし、このままカフェに勉強しに行こうか。
それとも……?
無理やり詰め込むよりも、やっぱり、心のビタミンって大事だよね!
そう自分に言い聞かせながら、わたしは、あのお家を目指すことを心に決めたのだった。
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