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普段、あんまり来ない二階。
いつも開けたら怒られるドアの前に立って、軽く深呼吸をひとつ。
しょっちゅう会ってるのに、やっぱり、好きな人に会う前は緊張してしまう。
髪型おかしくないかな。
今日は制服じゃないから、服装これでよかったかな。
ちょっと色つきのリップを塗ってみたけど、気づいてくれるかな……。
そんな風に思いながら、わたしは、そのドアを三回ノックした。
……返事はない。
「颯くん、開けるよー?」
相変わらず、返事はない。やっぱり寝てるみたい。
わたしはそろそろとドアを開けて、部屋の中を伺った。
漫画と教科書で散らかった部屋。なんか、男の子って感じがして、すごくいい。
思わず一つ、大きく息を吸い込んだ。かすかに颯くんの匂いがするようで、つい、顔がにやけてしまう。
そして、窓際のベッドには……。
あ、いたいた。やっぱり寝てる。
彼に近づいて、思わず彼の顔を覗き込む。
最近は、ゲームのしすぎで眼鏡が多くなった。
眼鏡のない颯くん、久しぶりに見るかも。
ふふふ、寝顔、かわいいなー……。
……チュー、したいなー……。
そんな風に微笑ましくもどきどきしながら彼を見つめていると、ゆっくりと、彼の瞼が開かれた。
しばらくぼうっとしたあとで、その目はわたしを捉えて、途端にがばっと勢いよく起き上がる。
わたしは、そのタイミングで、勢いよく彼に声をかけた。
「おはよ、颯くん!」
そんなわたしの呼びかけにしばらく固まってから、そして……。
ベッドから急いで這い出てどたばたと自分の部屋のドアを開け、吠えた。
「お母さぁぁんっ!! なんでここに岬がいるんだよぉぉ!!」
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