Ⅱ 岬(高校3年生)

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普段、あんまり来ない二階。 いつも開けたら怒られるドアの前に立って、軽く深呼吸をひとつ。 しょっちゅう会ってるのに、やっぱり、好きな人に会う前は緊張してしまう。 髪型おかしくないかな。 今日は制服じゃないから、服装これでよかったかな。 ちょっと色つきのリップを塗ってみたけど、気づいてくれるかな……。 そんな風に思いながら、わたしは、そのドアを三回ノックした。 ……返事はない。 「颯くん、開けるよー?」 相変わらず、返事はない。やっぱり寝てるみたい。 わたしはそろそろとドアを開けて、部屋の中を伺った。 漫画と教科書で散らかった部屋。なんか、男の子って感じがして、すごくいい。 思わず一つ、大きく息を吸い込んだ。かすかに颯くんの匂いがするようで、つい、顔がにやけてしまう。 そして、窓際のベッドには……。 あ、いたいた。やっぱり寝てる。 彼に近づいて、思わず彼の顔を覗き込む。 最近は、ゲームのしすぎで眼鏡が多くなった。 眼鏡のない颯くん、久しぶりに見るかも。 ふふふ、寝顔、かわいいなー……。 ……チュー、したいなー……。 そんな風に微笑ましくもどきどきしながら彼を見つめていると、ゆっくりと、彼の瞼が開かれた。 しばらくぼうっとしたあとで、その目はわたしを捉えて、途端にがばっと勢いよく起き上がる。 わたしは、そのタイミングで、勢いよく彼に声をかけた。 「おはよ、颯くん!」 そんなわたしの呼びかけにしばらく固まってから、そして……。 ベッドから急いで這い出てどたばたと自分の部屋のドアを開け、吠えた。 「お母さぁぁんっ!! なんでここに岬がいるんだよぉぉ!!」
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