Ⅰ 颯(小学6年生)

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(そう)、あの高校生知ってんの?」 知らない。今日が初対面に決まってる。 「おい颯、あのお姉さんすごかったな」 ああすごかった。なんでこうなったんだか。 「なあなあ颯!お前あの女子高生とさ……」 「うるさいな!知らないよあんなの!」 とうとうガマンしきれなくなって、おれは(たくみ)たちに言い放った。 それでも巧たちは、さっきの地獄がよっぽど面白かったみたいで、全力で話題に食らいついてくる。 「おい、照れるなよー。ほんとは嬉しいんだろ、知ってるっつーの」 「ふざけんな。あんな訳のわからない高校生、お前らだってイヤだろ! そもそも女子とかどうでもいいし!」 「えー! お前、修学旅行の夜、山口が好きだって言ってたじゃん」 「あっ、巧、ばか。山口ってあれだろ、この前三組の遠藤と付き合いだした山口杏奈(やまぐちあんな)だろ」 「あ、そっか。いっけね、ごめんな颯」 「うるせえよ、お前らいいかげんにしろ!」 ここにきて山口杏奈の名前を出されるダブルパンチに、おれの心はダウン寸前だった。
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