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あっという間に、試験の前日の金曜日になった。
なんでよりによって、こんな日に登校日があるんだろう……。
そう思いつつ、学校に向かう。
颯くんも昨日から期末試験なので、さすがに、深町家に朝ご飯をもらいにはいけなかった。
学校に来ているクラスメイトは、半分くらいだった。
残りの半分は、登校日すら学校に来ないで、塾やら自宅やらで自習しているらしい。
明日同じ学校を受ける予定の、えみりもいなかった。
……わたしも、そうすればよかったかな。
学校に来ていても、先生の話なんて無視して、参考書から目を離さない子。
推薦や就職でとっくに進路が決まっていて、卒業旅行のためにパンフレットなんて広げている子。
どっちにもなれずじまいのわたしは、なんとも居心地の悪いホームルームを過ごしていた。
「岬、今日来ないかと思ってた。えらいじゃん!」
ホームルームが終わったあと、推薦でもう大学が決まっているえっちゃんが、話しかけてくれる。
「あ、うん。やっぱり、最後まで皆勤賞でいたいし……」
「さっすが岬だわー」そう言って、えっちゃんの目はとたんにつりあがった。「聞いてよ翔のやつ、今日も登校日サボって塾だって! せっかく会えると思ったのにー」
翔くんは、えっちゃんの彼氏だ。
そして最近、翔くんの顔を学校で見ることはほとんどなかった。
「翔くん、えっちゃんと同じ大学行くって張り切ってるもんね」
そんなわたしの言葉に、えっちゃんは曖昧な表情で頷く。
「それは嬉しいんだけど……。でも、もう二週間も会ってないんだよ! 今日は来るって約束してたのに、『模試の結果が悪かったから』だって!」
「模試?」
「あ、うん。この前あったやつ。岬も受けたでしょ」
あ、あれだ。わたしもめっちゃ悪かったやつ。
翔くんもそうだったんだとしたら、やっぱり、問題が難しかったんだな。
「わたしも悪かったよ~」なんて言いかけたその矢先、えっちゃんは、しゅんとした顔になった。
「まぁ、塾の他の人は、同じ志望校でもA判定ばっかりだったのに、あいつだけBだったらしくて。がんばってるのにな、あいつ……」
思わず、笑顔が凍る。
「わたしCだったよ」なんて、口が裂けても言える雰囲気ではなかった。
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