Ⅱ 岬(高校3年生)

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あっという間に、試験の前日の金曜日になった。 なんでよりによって、こんな日に登校日があるんだろう……。 そう思いつつ、学校に向かう。 颯くんも昨日から期末試験なので、さすがに、深町家に朝ご飯をもらいにはいけなかった。 学校に来ているクラスメイトは、半分くらいだった。 残りの半分は、登校日すら学校に来ないで、塾やら自宅やらで自習しているらしい。 明日同じ学校を受ける予定の、えみりもいなかった。 ……わたしも、そうすればよかったかな。 学校に来ていても、先生の話なんて無視して、参考書から目を離さない子。 推薦や就職でとっくに進路が決まっていて、卒業旅行のためにパンフレットなんて広げている子。 どっちにもなれずじまいのわたしは、なんとも居心地の悪いホームルームを過ごしていた。 「岬、今日来ないかと思ってた。えらいじゃん!」 ホームルームが終わったあと、推薦でもう大学が決まっているえっちゃんが、話しかけてくれる。 「あ、うん。やっぱり、最後まで皆勤賞でいたいし……」 「さっすが岬だわー」そう言って、えっちゃんの目はとたんにつりあがった。「聞いてよ翔のやつ、今日も登校日サボって塾だって! せっかく会えると思ったのにー」 翔くんは、えっちゃんの彼氏だ。 そして最近、翔くんの顔を学校で見ることはほとんどなかった。 「翔くん、えっちゃんと同じ大学行くって張り切ってるもんね」 そんなわたしの言葉に、えっちゃんは曖昧な表情で頷く。 「それは嬉しいんだけど……。でも、もう二週間も会ってないんだよ! 今日は来るって約束してたのに、『模試の結果が悪かったから』だって!」 「模試?」 「あ、うん。この前あったやつ。岬も受けたでしょ」 あ、あれだ。わたしもめっちゃ悪かったやつ。 翔くんもそうだったんだとしたら、やっぱり、問題が難しかったんだな。 「わたしも悪かったよ~」なんて言いかけたその矢先、えっちゃんは、しゅんとした顔になった。 「まぁ、塾の他の人は、同じ志望校でもA判定ばっかりだったのに、あいつだけBだったらしくて。がんばってるのにな、あいつ……」 思わず、笑顔が凍る。 「わたしCだったよ」なんて、口が裂けても言える雰囲気ではなかった。
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