Ⅱ 岬(高校3年生)

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あっという間に、朝が来る。 颯くんが言う通りちゃんと寝ようとしたのに、落ち着かなくって、机で単語帳を開いたまま、変な体勢で三時まで眠ってしまった。 受験前日の過ごし方としては、なかなかに最悪だ。 早くも自己嫌悪に陥りながら、菓子パンの封を開ける。 ……でも、一口食べただけで、どうしても、それ以上パンは喉に通っていかなかった。 「岬、いってらっしゃい。がんばってな!」 なぜかお父さんも緊張した顔で、わたしの肩を叩いた。 「……うん。いってきます」 わたしはつい、おんなじ顔になりながら、玄関の扉を開ける。 えっと、駅でお茶とお昼のご飯を調達して、それから、朝もインゼリーくらいは飲んでおいた方がいいかな……。 そんな風に考えながら、アパートの階段を降りていく。と。 ……なぜか、わたしの脳内センサーが、チカッと一回、にぶく光った。 「えっ!?」 「うわっ!」 わたしが顔を上げた先、そこには、階段の下で驚いた顔をする、見慣れたメガネの男の子が立っていた。 「そ、そ……、颯くんっ!?」 「しーっ、しーっ!! まだ朝だから!」 颯くんにそう言われて、わたしは慌てて口をつぐむ。 「……おまえ、さっきまで下向いて階段降りてたくせに、なんで急にこっちに気づくんだよ。それこそ心臓に悪いわ」 「だ、だって、せ、センサーが……!」 「はぁ?」 驚きすぎて、言葉がうまく出てこない。 なんで颯くんがウチに!? も、もしかして……。 「……見送りに、来てくれたの?」 わたしの言葉に、颯くんは、ぷいっとあさっての方向を向いた。 「お母さんが、どうしても、持ってってやれって。おにぎりと玉子焼き……」
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