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話は、さっきの学級活動の時間に遡る。
今日の三、四時間目は、特別授業で、近くにある高校の高校生たちと交流する時間だった。
それぞれ好きなスポーツを選んで、一緒に汗を流して、地域の交流もはかるというのが目的だったと思うんだけど……。
おれが選んだバドミントンが行われる体育館で、それは、突然、起こったのだった。
「あ、あの!」
おれは、ひとりの女子高生に声をかけられる。
「なに?」
おれは、てっきり行方不明になってたシャトルを拾ってくれたのかと思った。
けれど、そうじゃなかった。
その女子高生の言葉に、体育館が一瞬凍ったように感じた。
「ひ、一目ぼれしましたっ! わたしと、付き合ってください!」
「……は?」
おれは今、いったい、何を聞き間違えたのか。
そんなことを考えていると、その言葉を耳ざとく聞いていた巧が、ばたばたとかけよってくる。
「お、おいおい、颯っ! なにコクられてんだよっ!」
こいつにだけは聞かれたくなかった。
というか、こいつにもそう聞こえてたのなら、やっぱりおれの聞いた言葉は聞き間違いじゃなかったみたいだ。
生まれて初めての告白。
山口杏奈からの告白を楽しみにしてたのに、なんでこんな高校生から。
というか、どうして、おれ?
「あ、あの」やっとのことでおれは口を開く。「えっと、なんで」
「なんでって……」
そう口ごもった彼女は、目をきょろきょろと泳がせた。
耳まで真っ赤なその顔は、やっぱりジョーダンではなさそうだ。
「とにかく、さっき軽く自己紹介したときに、本当に一目ぼれで。『わたしの人生にはこの人しかいない!』って、そう思ったの」
こ……、『この人しか』って言われても。『人生』って言われてもっ!
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