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と、いうことで。
輝かしい青春を取り戻すため、おれに残された手段は、これしかなかった。
「同じ中学の奴がほとんどいないような高校に進学する」。
そのために必死で勉強して、そこそこに頭のいい私立へのチケットをもぎ取った。
そして、入学式の朝。
この日のために、メガネをやめてコンタクトにもした。
わかりやすく高校デビューだ。笑いたきゃ笑え。
こいつの呪縛から解き放たれるのなら、なんだってやる。
ここまで長々と色々語ってきたが、早い話が、おれは、同級生の女子にモテたいんだ!!
「そ、颯くん、メガネは?」
もうすぐ二十歳だってのに今日も今日とてタダ飯を食いに来た岬は、おれの顔を見上げてきょとんとする。
「やめた。テニス続けるなら、ない方がいいと思って」
なんて、別にそんなにテニスを続ける気もないんだけど。
そんなおれの適当な言葉に、岬は「えっ」と声を漏らした。
「え~、わたし、颯くんのメガネ好きなのに~! でもメガネがないのも、正統派イケメンって感じがして、いい……」
「……行って来ます」
「あぁ~、待って待って、無視しないでっ! もうちょっとで食べ終わるから、一緒に行こうよぉっ」
うしろでそう叫ぶ岬のことは、構わないことにした。
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