85人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっと……おれ、小六だけど」
そんなおれの言葉に、彼女はブンブンと首をふった。
「年なんて関係ない! てか、小学生と高校生ってインパクトあるけど、実際、四歳しか違わないしっ!」
『しか』じゃない! おれはその女子高生を見上げながらそう思う。
女子高生は、続けて早口で話し始めた。
「さっきも自己紹介したけど、わたし、栗林岬っていいます。あの、あ、LINEのID、misamisamisakiだから! よかったら颯くんのLINEも教えて欲しいなぁ、って」
なおも精いっぱいしゃべる女子高生に、おれはすこしだけ悩んでから口を開いた。
「あの、おれ、携帯持ってないから……」
まあ、小六だし。そりゃほしいけど、小六だし。
そんな俺の言葉に、女子高生ははっとした顔をしてからあからさまに落ち込んだ。
「あ、そっか……。でも、わたし、颯くんのことを好きな気持ちはこの先ずっと変わらないと思うの。だから、また来てもいいですか?」
そう言って女子高生は、俺より高い目線からがんばって上目使いの表情を見せた。
俺のとなりには、いつの間にかおれの友だち三人が集まって、おたがいに顔を見合わせて「わおー」とか言っている。
なんてのんきなやつら……。
「えっと……、来てもいいかって言われても、たぶん、ふだんは小学校って高校生入れないと思う」
「あっ……」
そう女子高生は小さくつぶやくと、そのうちあごに手を当てて、なにかを考え始めた。
そうしてなにかを彼女の中で納得させたようで、小さくうなずく。
な、なんだなんだ……?
「とにかく、わたし、颯くんのこと好きなんで! また会えたら! えっと……、とりあえず今日はこんなところで!」
そう言って、その高校生は逃げるように体育館から出ていく。
「やっべーもん見ちゃったぁ……」
となりで、巧がつぶやいた。
……あとのおれたちの会話は、最初の通りである。
最初のコメントを投稿しよう!