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「あ、あのさ、えみり。ちなみに、今日の朝、普通に話してきたんだけど、その……」
「……その?」
「……彼女いるのにさ、わたしに、えっと……。お、襲っちゃうぞ、みたいなこと言うの、なに考えていると思う……?」
今朝の出来事を思い出しながら、わたしはおずおずとえみりに話した。
するとえみりは、スンっと、真顔になって。
「シンプルにクズ」
「ひっ、ひどいっ! あ、えっと、きっと冗談、冗談なんだけどねっ!? でもなんか、颯くんってずっとわたしの中で『かわいい』男の子って感じだったから、なんというか……」
「男を見せられて、引いたってこと?」
「ひ、引いたんじゃなくて、ていうか……。じ、冗談でも、わたしのこと、そういう風に思ってくれるんだって、嬉しかったというか……」
……って、あれ? 反応がないぞ。
そう思って顔をあげると、えみりは、遠い目をして「はぁーっ」と深いため息をついていた。
「もう、だめだ、これ」
「えっ、なんでよっ!」
「わかった! いっそ、もう、こっちから襲っちゃえ!」
「……は!?」
急にとんでもないことを言い出したえみりに、一気に顔が熱くなる。
「そんなこと言うなら、いっそ、こっちから襲っちゃおうよ! そんで、岬はアンタにとってお姉ちゃんじゃなくて女なんだぞってことを、『颯くん』とやらにわからせるしか……」
「え、えみり、声大きいってっ!!」
「でも、悔しいじゃんっ! 彼女持ちの癖して、そんな冗談言って振り回してくるガキなんて! それなら、こっちだってある程度ワルになって、彼女のことなんていったん置いといてさぁ! オトナの世界ってヤツを教えてやろうよ!」
「そ、そんなこと無理無理、絶対無理~っ!」
そ、そんなの、できるわけないじゃんっ!!
パニックなわたしを見て、えみりは面白そうに笑った。
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