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三限が終わって、駅のホームで電車を待っている途中。
ふとさっきのえみりの発言を思い出して、顔がかあっと熱くなる。
襲っちゃえ、って。
わたしにそんな勇気ないし、そもそも、颯くん、彼女いるんだってば。
えみりは「ワルになって」とか言ってたけど、そんなの……。
ふるふると首を小さく横に振って、来た電車に乗り込む。
すると……。
「あっ」
「……げ、またかよ」
今日も、颯くんを見つけてしまった。
今日の颯くんは一人だった。そのことに、ついホッとしてしまう。
……とはいえ。
昨日のことと今朝のことがあって、なんか、ちょっと気まずい。
あぁ、もう、あんまり働いてほしくないときも、わたしの『颯くんセンサー』は反応しちゃうんだから……!
そんな風に思いながら、話題を必死に探していると、颯くんが「あのさっ」と、とつぜん言った。
わたしが颯くんの顔を見ると、颯くんは、横顔のまま、気まずそうに話し出す。
「……今朝は、さすがに、ごめん。朝言ったこと、撤回する。わかってるとは思うけど、冗談だから」
……つきん。
今朝のことを謝る颯くんに、なんだか、心臓が痛んだ。
まぁ、そりゃ、びっくりして、怖いなんて言っちゃったけど。
でも別に、嫌な気持ちには、ならなかったというか……。
なんなら、それはそれで、ちょっと、嬉しかったのに。
冗談なら、「彼女ができた」って方を、冗談にしてよ。
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