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家に帰って、駅でもらってきた求人雑誌を広げる。
遊ぶためにも、教習所に通うにも、結局お金は必要だもんな。十八なら高校生でも深夜ってバイトできるんだっけか。まぁ学校は行かなきゃだし、できれば十時くらいで終わるやつがいいかな……なんて考えて、ふと、駅前のゲーセンの求人が目に留まった。
時給千百円、十八歳以上、高三生可、か。
ゲームは好きだし、ちょうどいいかも……と思っていると、「ただいまー」と、玄関から母の声がした。
「あ、アキコサン、おかえりー」
「なによ、のんきじゃない。受験生がタウンワークなんて広げちゃって」
「指定校推薦、通ったから。ダメ元で希望出してたK大のやつ……」
そんなおれの言葉を聞いて、母は「は!?」と驚いた声を出す。
「なんでそーゆー大事なことを黙ってんのよアンタ!! 連絡くらいよこしなさいよっ!!」
「え、だって、帰って来たら言えばいいかなって……」
「何言ってんの、それ、ほとんどの人が受かるやつでしょ! 受験終わったようなもんでしょ!?」
「ま、まぁ、そうだけど……」
「お祝いしなきゃじゃないのっ!!」
そう言って、母は冷蔵庫をばんっと開けた。
あぁでもないこうでもないと言いながら、次は冷凍室を覗き込む。
「ほら、ろくな材料もないじゃない! あっ、じゃあ土日のどっちかでパーティするから! 岬ちゃんに予定聞いて!」
「は? な、なんで岬まで……」
「今すぐ!」
「は、はい……」
母の剣幕に圧倒されて、おれはスマホを取り出す。
ラインで岬のアカウントを探して、トーク画面を出した。
悩みながら、てれてれと、メッセージを作る。
『お久しぶりです、颯です。指定校推薦もらって、ほぼK大に行けることが決まりました。つきましては、週末、我が家で母がパーティを開くようです。岬の予定を聞けと言われたので、ラインしました。土日のご予定いかがですか』
もう一回読み直したあと、「送信」をタップする。
我ながら、なんかカタい気もするけど……。ま、いっか。
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