Ⅳ 颯(高校3年生)

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家に帰って、駅でもらってきた求人雑誌を広げる。 遊ぶためにも、教習所に通うにも、結局お金は必要だもんな。十八なら高校生でも深夜ってバイトできるんだっけか。まぁ学校は行かなきゃだし、できれば十時くらいで終わるやつがいいかな……なんて考えて、ふと、駅前のゲーセンの求人が目に留まった。 時給千百円、十八歳以上、高三生可、か。 ゲームは好きだし、ちょうどいいかも……と思っていると、「ただいまー」と、玄関から母の声がした。 「あ、アキコサン、おかえりー」 「なによ、のんきじゃない。受験生がタウンワークなんて広げちゃって」 「指定校推薦、通ったから。ダメ元で希望出してたK大のやつ……」 そんなおれの言葉を聞いて、母は「は!?」と驚いた声を出す。 「なんでそーゆー大事なことを黙ってんのよアンタ!! 連絡くらいよこしなさいよっ!!」 「え、だって、帰って来たら言えばいいかなって……」 「何言ってんの、それ、ほとんどの人が受かるやつでしょ! 受験終わったようなもんでしょ!?」 「ま、まぁ、そうだけど……」 「お祝いしなきゃじゃないのっ!!」 そう言って、母は冷蔵庫をばんっと開けた。 あぁでもないこうでもないと言いながら、次は冷凍室を覗き込む。 「ほら、ろくな材料もないじゃない! あっ、じゃあ土日のどっちかでパーティするから! 岬ちゃんに予定聞いて!」 「は? な、なんで岬まで……」 「今すぐ!」 「は、はい……」 母の剣幕に圧倒されて、おれはスマホを取り出す。 ラインで岬のアカウントを探して、トーク画面を出した。 悩みながら、てれてれと、メッセージを作る。 『お久しぶりです、颯です。指定校推薦もらって、ほぼK大に行けることが決まりました。つきましては、週末、我が家で母がパーティを開くようです。岬の予定を聞けと言われたので、ラインしました。土日のご予定いかがですか』 もう一回読み直したあと、「送信」をタップする。 我ながら、なんかカタい気もするけど……。ま、いっか。
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