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「颯くん、K大合格、おめでとぉ~!!」
パンッ!!
玄関を開けた瞬間、突然の破裂音がして、思わず体を震わせる。
そのうちふぁさっとカラフルな紙テープが降ってきて、おれのメガネに絡みついた。
そんな様子を見て、目の前の岬はぷっと吹き出す。
「あっ、ごめんごめん! お祝いしたい気持ちが先走っちゃって~」
クラッカーのゴミをくるくる巻き取って回収しながら、おれに向けて「てへっ」と笑う。
おれ、こんな二十二歳には、なりたくねーなぁ……。
「にしても、すごいねぇ! 推薦でK大なんて、やっぱり颯くんは頭がいいんだねぇ~」
「親戚のおばちゃんみたいなこと言うなよ。てか、まだ合格ではないし」
「でもほぼ決まりでしょ!? 頭がよくって、イケメンで、ついでに足も速いって、わたしの旦那様はなんてハイスペックなんでしょう……」
「寒いから早くあがれよ」
「ねぇ全部無視しないでよぉ!」
一か月ぶりに見た岬は、髪色が少し明るくなって、毛先がふわふわとパーマっぽくなっていた。
……けど、そのことを言うと、「気づいてくれるなんて愛ね!」といつものが始まってしまうから、あえて言わないようにした。
「岬ちゃん、いらっしゃ~い! 元気だった~!?」
「わ~、亜希子さーん! 元気ですぅ、やっと会えた~!!」
「あら、髪型かわい~! あとちょっとやせた?」
「本当ですか、やったぁ!! うふふ、こうしてますます大人の女に磨きをかけていってしまうのね、わたしっ……!」
ポンポンと弾む会話に、父と二人で圧倒される。
……にしても、久しぶりに来たからこそわかるけど。
あいつが来るだけで、我が家が、びっくりするくらい明るくなる。
それは、単純に、すごいなと思った。
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