Ⅳ 颯(高校3年生)

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「颯くん、K大合格、おめでとぉ~!!」 パンッ!! 玄関を開けた瞬間、突然の破裂音がして、思わず体を震わせる。 そのうちふぁさっとカラフルな紙テープが降ってきて、おれのメガネに絡みついた。 そんな様子を見て、目の前の岬はぷっと吹き出す。 「あっ、ごめんごめん! お祝いしたい気持ちが先走っちゃって~」 クラッカーのゴミをくるくる巻き取って回収しながら、おれに向けて「てへっ」と笑う。 おれ、こんな二十二歳には、なりたくねーなぁ……。 「にしても、すごいねぇ! 推薦でK大なんて、やっぱり颯くんは頭がいいんだねぇ~」 「親戚のおばちゃんみたいなこと言うなよ。てか、まだ合格ではないし」 「でもほぼ決まりでしょ!? 頭がよくって、イケメンで、ついでに足も速いって、わたしの旦那様はなんてハイスペックなんでしょう……」 「寒いから早くあがれよ」 「ねぇ全部無視しないでよぉ!」 一か月ぶりに見た岬は、髪色が少し明るくなって、毛先がふわふわとパーマっぽくなっていた。 ……けど、そのことを言うと、「気づいてくれるなんて愛ね!」といつものが始まってしまうから、あえて言わないようにした。 「岬ちゃん、いらっしゃ~い! 元気だった~!?」 「わ~、亜希子さーん! 元気ですぅ、やっと会えた~!!」 「あら、髪型かわい~! あとちょっとやせた?」 「本当ですか、やったぁ!! うふふ、こうしてますます大人の女に磨きをかけていってしまうのね、わたしっ……!」 ポンポンと弾む会話に、父と二人で圧倒される。 ……にしても、久しぶりに来たからこそわかるけど。 あいつが来るだけで、我が家が、びっくりするくらい明るくなる。 それは、単純に、すごいなと思った。
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