Ⅳ 颯(高校3年生)

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食後のケーキも食べ終わって、岬が家に帰るとき。 「送ってやんなさい!」と、母に家を閉め出された。 ……まったく、ほんと、強引な人だ。 「良かったのに。残業でこんな時間になるのもしょっちゅうだし」 そう言って、岬はたははと笑う。 なんとなく、スマホを見る。時間は十時前だった。 「残業、そんなに多いの?」 「そろそろ、繁忙期だからね」 「……なんか、残業ばっかって、よくない気がするんだけど」 「うーん、小さな会社で、労組とかないからね。でも、みんないい人たちだから、そんなに悪くもないよ」 ハンボーキ。ロークミ。 聞いたことがない言葉が続いて、口の中で、もごもごとその言葉をくり返す。 でも、「なにそれ」と聞くのもシャクだったので、そのまま黙っていた。 と。 そこで、突然、岬のスマホのバイブが鳴る。 「……あっ、ちょっと、颯くんごめんね!」 そう言って、岬はその電話に出た。 「はい、栗林です! はい、明日の打ち合わせですよね。あー、たしか切らしていたと思うので、朝コンビニで買っていきます。はい、はい、わかりました。あ、いえ、大丈夫です。澤山主任こそ大変ですね。では、失礼します」 「……会社の人?」 「えっ!? あ、うん、先輩。でも、そんな大した用じゃなかったから平気!」 ……大した用じゃないのに、日曜の夜に、電話なんかしてくるのか。 サワヤマシュニン。 電話相手の男の名前も、なんとなく、岬にばれないところでもごもごとくり返していた。
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