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結局、あのあと五百円玉を入れて、まさかの一発ゲットという適度な残念ぶりを見せた巧。
変わんないな、こいつ。そう苦笑いしながら、おれはシェイクをすする。
「あ、そうそう、この子、おれの彼女のアイちゃん!」
まだあどけなさが残る女の子が、ぺこりと頭を下げる。
「こいつ、小中一緒だった颯ね!」と紹介されて、おれも「あ、どーも」とあいさつした。
「颯、おまえ、受験どうしたんだよ。ゲーセンなんて一人でぶらぶらして~」
「推薦で受かりそうだから、あそこでバイトしようと思って」
「えっ、そうなの!? すっげ、さっすがぁ」
「巧は?」
「き、聞くなよ、それ。たまの息抜きくらいさせてよぉ~……」
そんなやりとりに、アイちゃんはふふっと笑う。
「……そういえば、巧のこと『先輩』って言ってたよね。アイちゃん何年生?」
「二年です」
「一個下か。やるじゃん、巧」
「あ、違います。中二です」
「えっ」
とっさに、巧の方を見た。
巧は、てれてれと頭を掻く。
「うちの学校の軽音、中高合同なんだよね。それで、かわいい子いるなーって」
そんな言葉に、アイちゃんも、同じようにてれてれとはにかんだ。
あ、へぇ~……。
「いいじゃん。巧、親御さんに殺されないようにしろよ」
「そ、それはっ! まぁ、善処します……」
なんだ、それ。
そう思いつつ、赤くなる二人を見て、自然と口元が緩む。
と、そこで、巧がおれをにらんだ。
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