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「それより! おまえこそ、岬さんとどうなったんだよ!」
「はぁ!? ……べつに、なんもねーよ」
「なんもないわけないだろ!? あ、アイちゃんあのね、こいつ、年上の彼女がいて、かれこれ小学校の時からメチャクチャ溺愛されてて……」
「説明せんでいいわ! てか、彼女じゃないし!」
「……まだそんなこと言ってんの。うわー、ないわー」
巧が、ずぞーっとコーラをすする。
「そんなことやってると、岬さんに飽きられちゃうぞ。この前の夜、それっぽい女の人がライブハウスの前を通りかかったのを見かけたけど、なんか、スーツの男といて、いい感じに見えちゃったぞ。知ぃーらないぞぉー?」
ずぞーっ。
なおも聞こえる巧のコーラの音に、なんだか無性に腹が立つ。
「……スーツの男?」
「そう、会社の先輩っぽい、なんか爽やかスポーツマンって感じの男! 十時過ぎくらいかな、二人で飲んだりしてたのかも」
「……ふーん……」
あの写真と、「サワヤマシュニン」という言葉。それらが、ぽんっと、頭に浮かぶ。
目の前の巧が、にたりと笑って小声で話す。
「……あの近く、ほら、ホテルもあんじゃん? もしかしたら、もしかしちゃうかも……」
「バカ、アイちゃんの前でそーゆーの言うなよ」
「でも颯ちゃん、油断してたら痛い目みるよー?」
「……うるせー。ったく、なんなんだよ、おまえといい山口杏奈といい!!」
「山口! うわ、その名前も懐かしー!!」
ばんっ!!
そこで突然、おれのシェイクが軽く飛び上がる。
机を両手で力強く叩いたアイちゃんが、ずいっとおれに顔を近づけた。
「それで! 颯ちゃん先輩は、その女の人のこと、好きなんですかっ!?」
そ、颯ちゃん先輩ぃ……? おれは数回まばたきをしてから、アイちゃんを見る。
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