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「え、あ、いや……。別に、好きとかじゃ……」
「じゃあ、ハッキリさせてあげた方がいいと思いますっ!」
「……は?」
そう言って、アイちゃんは巧のポテトを奪って、口に放り込みながら言った。
「いいですか!? 二十代の女の人って、ナイーブなんですよっ! 上司とかからすぐ『彼氏いないの』とか、『いつ結婚するの』とか言われて、ウンザリしてるはずです! セクハラが叫ばれて久しいというのに、まったく、日本という国はって感じですけど。だからとにかく、好きでも嫌いでも、颯ちゃん先輩がハッキリさせてあげないと、その人がかわいそすぎます! 中途半端な優しさとか、要らないと思いますけどっ!」
「……は、ハイ……」
四歳年下の女の子にそう啖呵を切られて、おれは思わず姿勢を正す。
「……アイちゃん、名字、ハイバラって言わない?」
「違います、アイハラです」
「あっ、惜っしー……」
そんなどうでもいい会話をして、おれたちはマックを出た。
な、なんなんだよ。みんなして。
おれがガキなことくらい、おれがいちばんわかってるよ。
帰り道、公園でサッカーをする小学生たちを横目に、そんなことを考えた。
ふと、ポッケのスマホを取り出してみる。
『この前の日曜日は、お祝いに来てくれてありがとうございました。次の土曜とか、暇ですか。良かったら』
……「良かったら」、なんなんだ、おれ。
そう我に返って、メッセージを消そうとした。その時だった。
ばこん!!
「いってぇ!!」
「やばっ! お兄さんごめんなさーい、大丈夫ですかー!?」
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