Ⅰ 颯(小学6年生)

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翌日、その予感は的中することになる。 いつものように朝の支度をして、いつものようにくつを履いて、いつものように家の扉を開けた、そのときだった。 なんか、いた。 「おはよう、颯くん!」 「……え」 絶句するおれとは対照的に、女子高生はニコニコとほほえむ。 「少しでも会いたくて。来ちゃった」 『来ちゃった』じゃない! おれの頭のなかを、ストーカーという文字がうめつくす。恐怖でしかない。 身の危険を感じたおれは、女子高生の横をするりと抜けて、走り出した。 「あっ、颯くん!待って!」 待てるか! 風にのって走るおれは、完全に女子高生をまいたはずだった。なのに。 音だけでもわかる。うしろから聞こえてくる、力強いストライド。 それが少しずつ近づいてくる。 「あのっ、颯くん、待って、話だけでも!」 こいつ、女のくせに超速い。 怖い。 怖い怖い怖い! 「なんで……、こんな……、速……」 ついふり返ってしまったおれのつぶやきを耳ざとく聞いた岬が、なぜか自慢げに答える。 「わたし、中学時代、陸上部だったからね!」 はてしなくどうでもいい!!
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