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公園から突然飛んできたサッカーボールが、おれの頭を直撃した。
「だ、大丈夫、大丈夫。ほれ」
「ありがとうございまーす!」。そう言って、少年は、おれが投げ返したボールをキャッチする。
ずれたメガネを戻しながら、もう一回スマホを見た。……って、あれ?
「やっべ!」
ボールの衝撃で、メッセージの「送信」ボタンを押したらしい。
やばい、既読になる前に消さないと……って、あれ、既読!?
え、これ、どうしよう。そう思っていると、途端に、携帯が震えだした。
おれは観念して、その電話に出る。
「……は、はい……」
『颯くんっ!? なぁにっ!?』
「……え、あ、いやー……。大した用じゃなくって。母さんが『紅葉見に行きたいから、土曜日、岬ちゃんも暇なら』って……」
『えっ、行きたい!! ……けど、土曜、昼から出勤してくれないかって頼まれちゃって……』
「あ、じゃあ、全然いいから! 気にしないで! 忙しいとこ、ごめん」
『ううん、ちょうどお昼食べてたから大丈夫! 亜希子さんに、次は絶対行きたいですって言っといてぇ~!』
「わ、わかった、じゃあ……」
そう言って、通話を切った。
……なんか、ホッとしたような、なんというか……。
にしても、「お昼食べてた」って言ったっけ、あいつ。
首をかしげながら見上げた公園の時計は、午後四時四十七分を指していた。
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