Ⅳ 颯(高校3年生)

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「おつかれさまでしたー」 そう挨拶をして、おれはゲーセンを出た。 金曜の、十時過ぎ。駅前は、浮かれたやつらでごった返していた。 途中、へべれけになったおっさんとぶつかりそうになる。 普段はあんなに偉そうにしてるくせに、なんで大人って、酒が入ると、あんな馬鹿みたいになっちゃうんだろう。おれもそうなるのかな。 そんなことを思いながら、裏通りを歩いていく。 ふと、巧が言っていたことを思い出した。 「十時過ぎ、ライブハウスの前」……か。 ……べ、別に、心配な訳ではないし。まぁ、ちょっとだけ、気になるだけだし。 そう思って、ほんの少しだけ、遠回りをする。 ライブハウスの前まで来て、さりげなく、辺りを見回した。 ライブ終わりの若者、キャバクラのキャッチ、酔っ払いの中年のおっさんたち……。 そんなやつらの顔を順番に眺めて、ふと、我に帰る。 ……まぁ、いるわけねーよな。バカか、おれ。 そう思って、帰ろうとした、その時だった。 「あのっ、ご馳走様でしたっ!!」 ……ん? 聞き覚えのある声に、とっさにふり向く。 岬と、写真のあいつが、居酒屋から出てくるところだった。 ……マジかよ!? そう思って、とっさにライブハウスの立て看板の後ろに隠れる。 あ、明らかに怪しい。けど、そんなこと言ってる場合じゃない。 「部長、今日も来られなくって残念でしたね」 「忙しい人だからね」 そんな会話をしながら、隠れるおれの隣を通過しようとする。 岬の『颯くんセンサー』が、今日に限って働かないことに、ホッとするというか、モヤッとするというか。 「じゃあ、澤山主任は駅裏ですもんね。わたし、向こうなんで、ここで」 やっぱりアイツか、サワヤマシュニン!! ま、まぁ、もう解散みたいだし。 あいつがサワヤマシュニンと別れたあと、偶然っぽく声かけて、家にでも送って行くかしょーがない。 そんな風に思っていると……。 そのあとの光景に、おれは、目を疑った。 ぱしっと、サワヤマが、岬の右手を掴んだのだった。 「……は?」
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