Ⅳ 颯(高校3年生)

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……。 …………。 …………気まずい。 あのあと、サワヤマは、「なんだよおまえっ」と言い残して、逃げるように帰って行った。 「い、行くぞ」「あ、はい」。 そんな不思議な間の会話をして、おれと岬は、そのあとまったくの無言のまま、並んで歩いていた。 その間、自分がしでかしたことが、走馬灯のように駆け巡って、毛穴という毛穴から変な汗が噴き出してくる。 ところで「走馬灯のように」って、死ぬ間際以外にも使うんだっけ。 なんなら、今、死にたいくらいの気分だけど……。 おれよりわずかに後ろを歩く岬が、今、どんな表情をしているかわからない。 けど思えば、今までの時間、岬がおれのあんな言葉に反応しないことのがおかしかった。 ……もしかしたら、もしかして。 「こいつ余計なことしやがって」って、内心、思ってるのかも……。 そう思うと、きゅっと、胸が痛んだ。 もう、負けた。 負けだ。降参だ。 おれ、岬のこと、バカみたいに好きだ。 「……颯くん」 そう、岬に呼び止められるだけで、心臓がどきりと跳ね上がる。 おれは、岬の顔が見られないまま、体だけ振り向いた。 「……なに?」 「……あの……。ごめん……」 「ごめん」。 岬が謝る理由を考えて、途端に気持ちが凍っていく。 その言葉は、おれの気持ちに? 今までの、六年間に? そう心の中で問いかけていると、すんっと、鼻をすする音がした。
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