Ⅳ 颯(高校3年生)

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「や、やめろ痴女!」 「ちっ、痴女!? あっ、亜希子さん、颯くんがひどい言葉をーっ!」 「しーっ、しーっ!! 夜だから!! 声でかいわバカっ!!」 あー、もう! なんで、こうなるんだよっ!! さっきまでの涙はどこへやら、楽しそうに笑う岬。 なんか、小学生のとき読んだことわざ辞典に、こーゆー時のこと、載ってた気がする。 えーと、たしか……。 『今泣いた烏がもう笑う』……? ……ガキか、まったく。 「一応酔っ払いだろ。足元、気をつけろよ」 「うふふ、はーい!」 「……なんか、急に酔っ払いっぽくなってねぇ!?」 「あはは、なんか急に回って来たかもー。やだー、酔っちゃったぁ」 そう言って、おれの右腕に絡みつく岬。 ……くそ、こっちの気も知らないで! 「やめろ! 歩けるだろ、ちゃんと立てよ!」 「だって、今日の颯くん、優しいんだもん。ふふふ、わたし今、サイコーに幸せ……」 そんな言葉に、つい、ドキっとしてしまう自分が悔しい。 せめてもうちょっと、特別感のある幸せをあげたいところだけど……。 ……ま、いっか。岬には、これで。
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