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「や、やめろ痴女!」
「ちっ、痴女!? あっ、亜希子さん、颯くんがひどい言葉をーっ!」
「しーっ、しーっ!! 夜だから!! 声でかいわバカっ!!」
あー、もう! なんで、こうなるんだよっ!!
さっきまでの涙はどこへやら、楽しそうに笑う岬。
なんか、小学生のとき読んだことわざ辞典に、こーゆー時のこと、載ってた気がする。
えーと、たしか……。
『今泣いた烏がもう笑う』……?
……ガキか、まったく。
「一応酔っ払いだろ。足元、気をつけろよ」
「うふふ、はーい!」
「……なんか、急に酔っ払いっぽくなってねぇ!?」
「あはは、なんか急に回って来たかもー。やだー、酔っちゃったぁ」
そう言って、おれの右腕に絡みつく岬。
……くそ、こっちの気も知らないで!
「やめろ! 歩けるだろ、ちゃんと立てよ!」
「だって、今日の颯くん、優しいんだもん。ふふふ、わたし今、サイコーに幸せ……」
そんな言葉に、つい、ドキっとしてしまう自分が悔しい。
せめてもうちょっと、特別感のある幸せをあげたいところだけど……。
……ま、いっか。岬には、これで。
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