Ⅴ 岬(24歳)

1/26
前へ
/93ページ
次へ

Ⅴ 岬(24歳)

「女は、男と会うときより、女と会うときの方が気合いを入れる」。 ……ばい、えみり。 前、そう豪語していたのを思い出して、「二人ともオシャレな服着てくるんだろうなぁ」なんて考えながら、わたしは自分のクローゼットを開けた。 わたしが持っているなかでいちばんのオシャレな服といえば、この、薄ピンクのAラインのワンピース。 この前、颯くん……あっ、彼氏が、誕生日に買ってくれたものだ。 やっぱり、これを着ていくべきか。 いや、でも、颯く……彼氏とのデート以外でこれを着ていくのはちょっと……。 と。そこで、スマホが震えた。 てっきり明日のことをえみりがラインしてきたと思っていたのに、送り主は、愛しい愛しい、あの人だった。 その名前を見て、わたしの心はぴょんっと跳ねる。 『明日、高校の友だちとご飯に行くって言ってたよね。夜は?』 『たぶんランチだけして帰ると思う。えっちゃんは赤ちゃんも一緒だし』 『じゃあ、久しぶりに夜、食べに行こ。解散したら教えて。車で駅まで迎えに行くから』 颯くんとカレカノになって、一年半。 だけどわたしは、毎日新鮮な気持ちで、このまっさらなドキドキを味わっている。 だって!! あれだけツンだった颯くんが! わたしにデレてくれたとか! 幸せの極みでしょっ!?
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加