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Ⅴ 岬(24歳)
「女は、男と会うときより、女と会うときの方が気合いを入れる」。
……ばい、えみり。
前、そう豪語していたのを思い出して、「二人ともオシャレな服着てくるんだろうなぁ」なんて考えながら、わたしは自分のクローゼットを開けた。
わたしが持っているなかでいちばんのオシャレな服といえば、この、薄ピンクのAラインのワンピース。
この前、颯くん……あっ、彼氏が、誕生日に買ってくれたものだ。
やっぱり、これを着ていくべきか。
いや、でも、颯く……彼氏とのデート以外でこれを着ていくのはちょっと……。
と。そこで、スマホが震えた。
てっきり明日のことをえみりがラインしてきたと思っていたのに、送り主は、愛しい愛しい、あの人だった。
その名前を見て、わたしの心はぴょんっと跳ねる。
『明日、高校の友だちとご飯に行くって言ってたよね。夜は?』
『たぶんランチだけして帰ると思う。えっちゃんは赤ちゃんも一緒だし』
『じゃあ、久しぶりに夜、食べに行こ。解散したら教えて。車で駅まで迎えに行くから』
颯くんとカレカノになって、一年半。
だけどわたしは、毎日新鮮な気持ちで、このまっさらなドキドキを味わっている。
だって!!
あれだけツンだった颯くんが! わたしにデレてくれたとか! 幸せの極みでしょっ!?
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