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「岬、久しぶりー!! やだ、全然変わんない~!!」
「わ~、えっちゃーんっ!! めっちゃ久しぶり~っ!!」
次の日、駅前のカフェレストラン。
えみりとえっちゃんとわたしは、久しぶりに顔を合わせた。
短大も一緒だったえみりとはたまに会うけど、えっちゃんは久しぶりだ。
わたしとえみりは、つい、えっちゃんが押してきたベビーカーに目をやる。
「う~わ~! かっわいぃっ……!!」
「ふふ、岬、昔から子ども好きだもんね。『こんにちは、ゆずでーす』って」
「ゆずちゃんって言うんだ! ゆずちゃーん、こんにちはーっ!」
わたしが人差し指をゆずちゃんの方にそっと差し出すと、ゆずちゃんはきょとんとした顔をしながらも、ぐっとその指を掴んでくれた。
か、かわいいっ。かわいすぎるっ……!
悶えそうになるのをこらえながらも、つい、「もし、颯くんと結婚して、子どもが生まれたら……」なんて遠い未来のことを考えてしまう。
ふ、ふふ。きっとかわいいだろうな。
そして、そんな赤ちゃんを抱っこしてたらメガネを取られちゃって、「あ、こら、だめだぞー」なんて笑う颯くん。
ぜ、絶対かわいいに決まってるっ……!
「……岬? なに固まってんの?」
「はっ!? あ、いや、ゆずちゃんがかわいすぎてっ! いま六か月くらいっ?」
話を逸らしたわたしに、えっちゃんは、きょとんとした顔になった。
「うん、ちょうど六か月。岬、よくわかるね」
「今、転職して、保育園の栄養士やってるんだ」
「へー、なんか似合うー!」
「えっちゃんは育休?」
「ううん、辞めちゃった。就職してからすぐ妊娠したから、育休取りずらくって」
そ、そういうもんなんだ……。
けれど、えっちゃんはけろっとした顔で席に座る。
「でも、まぁ、旦那の稼ぎでやっていけないこともないしね。そのうち気が向いたら、スーパーでパートとかしようかなって」
「そっか。まぁ、人生いろいろだよねぇ~」
「てか!」そこで、えみりが食い気味に話す。「悦子、いつの間にそんないい条件の旦那見つけたのっ!?」
えみりの発言に、えっちゃんは一瞬きょとんとして、たははと笑った。
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