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「あ、亜希子さん……!?」
「やだ、久しぶり~! 元気だった~!? 颯ってばもったいぶっちゃって、岬ちゃんのことなかなか連れてきてくれないから~!」
亜希子さんは、嬉しそうに話しかけてくれる。
いつもなら、すごく嬉しい。い、いつもなら……!
そう冷や汗を流していると、はたと、亜希子さんはなにかを思い出したように振っていた右手の動きを止めた。
「あら? でもそういえば……」
そこまで言って、亜希子さんは、一瞬神妙な顔つきになる。
そしてボソッと「あとでしばいとこ……」と呟く亜希子さんに、わたしは慌てて声をかけた。
「あー、あの、違うんです!! 颯くん嘘ついてないです!! 確かに一緒に夕飯食べる約束してたんですけど、わたし、途中で急用思い出しちゃってっ……!」
「急用? それならあの子、車で送ってあげたら……」
「あ、わたしがいいって言ったんです!! なんか、悪かったんで!!」
これ以上、颯くんに迷惑かけるのはマズイ!
そう思って必死に弁護していると、亜希子さんは、じっとわたしを見つめていた。
……わたしの下手な嘘は、亜希子さんには、お見通しみたいだった。
「……岬ちゃん、颯とケンカでもした?」
「えっ!? あ、いや、ケンカはしてないです! ていうか、颯くんは何一つ悪くなくって……」
……なんか、余計なこと口走っちゃったかも……。
ドギマギしていると、亜希子さんはかすかに微笑んで、「とりあえず、座ろうか」と声をかけてくれた。
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