Ⅴ 岬(24歳)

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颯くんが言い終わるか言い終わらないかくらいのタイミング。 気付いたら、わたしは、颯くんの胸に飛び込んでいた。 「……ぞ、ぞうぐん……っ……」 「ゾウくんではないけど。……それ、泣いてるの、『いいよ』って意味でいい? あっ、もちろんすぐにとは言わない。岬のお父さんともお話ししなきゃだし。あと、万が一ここが嫌だったら、また別のところ探すけど……」 「らいじょうぶっ……。ぞうぐん、ありがどっ……」 「だから、ゾウくんじゃないっつーの」 颯くんは苦笑いしながら、わたしの背中に、優しく手を回した。 あぁ、また、颯くんのシャツがわたしの涙でぐちゃぐちゃになっちゃう……。 それでも颯くんは、そんなこと気にしない様子で、わたしの背中に回した手に力を込める。 「岬。おれ、まだ学生で親に学費とか払ってもらってる身だから、今の時点じゃ無理だけど……。予約、しといてもいい? 岬のこと」 ……わたし、うぬぼれちゃってもいいんだろうか。 颯くんの言いたいことって、つまり……? 「……もっど、ばっぎり言っでぐれないどわがんない」 「はっ!? お、おまえぇ……!」 左耳から、颯くんの恨み節が聞こえる。 それからしばらく時間を置いて、颯くんは、「あぁーっ」と呻いてから、もそもそっとつぶやいた。 「……結婚、してください。おれが卒業したら、すぐにでも」
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