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……あぁ、天国のお母さん。
お母さんは、お父さんにそう言われたとき、こんな気持ちだった?
幸せで。あまりにも、幸せすぎて。
もう、なにが夢で、なにが現実なのか、わからないくらいで。
「……ぞうぐん、わだじで、いいのっ? わだじみだいな、ごどもみだいなどじうえ……」
「……ふは、もう、しばらくなおんねーな、それ」
颯くんは、わたしの「ぞうぐん」のことは、もう諦めたみたいだった。
ちょっといたずらっぽく笑って、それから、わたしのおでこに、こつんと、自分のおでこを合わせる。
「小学生と高校生じゃ、全然違うけど。二十歳越えたら、四歳差なんて大したことないでしょ」
そうして、そのまま、優しいキスを、一回。
それから、また、強く抱きしめられた。
颯くんのぬくもりが、ふわっと、わたしのことを包み込んで。
……大きくなったね、颯くん。わたしの心配なんて吹き飛ばしちゃうくらい。
そう思うと、余計に颯くんが愛おしくなって、わたしもぎゅっと、腕に力を込めた。
「ぞうぐん、愛じでる」
「知ってる」
「……ぞうぐんは?」
「……この期に及んで、それ、言わせる?」
「聞ぎだい」
「……。……おれも、愛してるよ」
「……ふへ、ふへへへ……」
「……あーあ。まったく、めんどくさいヨメさんですこと」
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