Ⅴ 岬(24歳)

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……あぁ、天国のお母さん。 お母さんは、お父さんにそう言われたとき、こんな気持ちだった? 幸せで。あまりにも、幸せすぎて。 もう、なにが夢で、なにが現実なのか、わからないくらいで。 「……ぞうぐん、わだじで、いいのっ? わだじみだいな、ごどもみだいなどじうえ……」 「……ふは、もう、しばらくなおんねーな、それ」 颯くんは、わたしの「ぞうぐん」のことは、もう諦めたみたいだった。 ちょっといたずらっぽく笑って、それから、わたしのおでこに、こつんと、自分のおでこを合わせる。 「小学生と高校生じゃ、全然違うけど。二十歳越えたら、四歳差なんて大したことないでしょ」 そうして、そのまま、優しいキスを、一回。 それから、また、強く抱きしめられた。 颯くんのぬくもりが、ふわっと、わたしのことを包み込んで。 ……大きくなったね、颯くん。わたしの心配なんて吹き飛ばしちゃうくらい。 そう思うと、余計に颯くんが愛おしくなって、わたしもぎゅっと、腕に力を込めた。 「ぞうぐん、愛じでる」 「知ってる」 「……ぞうぐんは?」 「……この期に及んで、それ、言わせる?」 「聞ぎだい」 「……。……おれも、愛してるよ」 「……ふへ、ふへへへ……」 「……あーあ。まったく、めんどくさいヨメさんですこと」
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