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それから数日。
あれ以来、あの女子高生となにか言葉を交わすことはなかった。
いつも通りの日常に戻った……と、にぶいやつならそう思うだろう。
けれど、おれは気づいていた。
たまにだけど、おれの登下校中、うしろから視線を感じるのを。
……まじであの人、ストーカーになりたいんだろうか。
そんなこんなで、今日もおれは少しケーカイして、学校を出た。
しばらく歩いていくと、かすかに、うしろから足音が聞こえる。
ためしにとまってみると、その足音も止まる。
ああ、きょうもか。
そうあきれたおれは、少しイジワルをすることにした。
いつものわかれ道。
家は右だけど、おれはあえて左に曲がる。しばらく行って右。
そうして歩いていくと、そのうち右手には雑木林が広がってくる。
おれはこの中につっ込んでいく。
走るのが敵わないなら、これはどうだ。
女の子なら、制服でこの中に入ろうなんて思わないだろう。
おれは得意気にそんなことを思いながら、うっそうと繁る林のなかを進んでいく。
すると。
がさごそ。がさごそ。
……あれ。この音、おれじゃないな。
さすがにぞっとしてふり返る。
そこには、あの女子高生の姿はなかった。
代わりにいたのは……、見たこともない、お母さんよりも年上っぽい、おばさんだった。
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