Ⅰ 颯(小学6年生)

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それから数日。 あれ以来、あの女子高生となにか言葉を交わすことはなかった。 いつも通りの日常に戻った……と、にぶいやつならそう思うだろう。 けれど、おれは気づいていた。 たまにだけど、おれの登下校中、うしろから視線を感じるのを。 ……まじであの人、ストーカーになりたいんだろうか。 そんなこんなで、今日もおれは少しケーカイして、学校を出た。 しばらく歩いていくと、かすかに、うしろから足音が聞こえる。 ためしにとまってみると、その足音も止まる。 ああ、きょうもか。 そうあきれたおれは、少しイジワルをすることにした。 いつものわかれ道。 家は右だけど、おれはあえて左に曲がる。しばらく行って右。 そうして歩いていくと、そのうち右手には雑木林が広がってくる。 おれはこの中につっ込んでいく。 走るのが敵わないなら、これはどうだ。 女の子なら、制服でこの中に入ろうなんて思わないだろう。 おれは得意気にそんなことを思いながら、うっそうと繁る林のなかを進んでいく。 すると。 がさごそ。がさごそ。 ……あれ。この音、おれじゃないな。 さすがにぞっとしてふり返る。 そこには、あの女子高生の姿はなかった。 代わりにいたのは……、見たこともない、お母さんよりも年上っぽい、おばさんだった。
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