Ⅴ 岬(24歳)

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それから一週間後の週末、土曜日。 ……そう、すなわち、颯くんの誕生日の前日。 バイトの鬼な颯くんも、さすがに、この土日のシフトは入れなかったようだ。 今日に合わせて配送をお願いしていた家具や家電が運ばれてくるたびに、わたしの心は躍る。 「これぞ、『新婚さんのお部屋』って感じ……!」 「……岬さん、気が早いです」 「早くないもん、だってもうプロポーズもしてもらったもん!」 「あれはプロポーズじゃないから!」 「えぇ~……!」 あれをプロポーズと言わずして、なにをプロポーズと言うのか! むかつくような、ちょっとへこむような。そんな気分でぶうたれていると、ぼそっと、颯くんは言った。 「……プロポーズなら、もっと、いいレストランとか、夜景の見えるホテルとかでやり直すし……」 ……はっ……!? 「……そ、颯くんって、案外ロマンチストだよねっ……!」 「案外もなにも、ロマンを追い求めないでなにが男だっ」 そう言う颯くんの顔は、耳まで真っ赤だった。 ……あぁ、もう。 この人は、もう、ずぅっと、八年前からずぅーっと……。 「かわいいんだから」 「ばっ、バカにするなっ! あーあ、余計なこと言わなきゃ良かった!」 そう言ってぶうたれる颯くん。そんな顔すら、愛おしい。 と。そこで、ふと時計が目に入る。……ん? 「やばっ、もうすぐ六時じゃん! スーパー行かなくちゃ!」 「スーパー? もう、ピザとか頼めばよくね? それかコンビニ」 そんなこと言う颯くんに、わたしはブンブンと首を横に振る。 「せっかく台所広いんだもん、早く使いたいの!」 「ふーん……?」 それに……。
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