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深い森の中で、少年は死を待っていた。 妖魔はまだ少年の血の匂いを嗅ぎつけてきてはいないようだった。 今のうちに縄をほどくことができたら、ひょっとすると逃げられるかもしれないという思いもあったが、指一本動かせなかった。 自分の体から流れてゆく赤い液体をぼんやりと見つめながら、もうすぐ死ぬというのに飢えと渇きを覚えることが不思議だった。 飢えや渇きはいつものことで、これを満たすために自分の排泄物を口にすることさえあった。 少年の人生のほとんどすべてを占めるこの問題は、とうとう解決されることはなかった。 もういい。もう、もういい。 少年は命乞いの言葉を口にできなかった。 飢え、渇き、痛み、寒さ。 生きていたとしても、どのみち今感じている苦痛と同じものに耐えなければならないことは、十分知っていた。 はやく、はやくきて。 自分が妖魔に食われている間、ご主人さまたちを乗せた荷馬車は何とか逃げ切れるだろう。 その考えは一瞬少年を慰めたが、すぐにどうでもよいことに思われた。 体の感覚がなくなり、目が霞んだ。 寒さももう、感じない。 突然地面に顔が押し付けられた。自分の流した血の中に倒れこむ。 ついに妖魔に見つかったのだ。 やっと、おわる。 やっぱりいたいのかな。 少年が意識を保てたのはそこまでだった。なにか聞こえたような気がしたが、もうなにも感じなかった。
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