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それは常に突然訪れる。 はっきりと明確にそれを言い表す言葉はない。呼ばれた、と表現するものもいるが正しくはない。 多くの場合は霧が立ち込める。濃い霧のときもあれば、薄い霧のときもあるし、乱暴だと思うかもしれないがいっそのこと霧など現れないこともある。現実ではありえないものの姿を見る時もあれば、現実と何も変わらない時もある。 しかしその日、マアトに訪れたそれは非常にはっきりとしていた。 マアトは他人に比べて、わりと頻繁にそれに出会う。だからそれにはいろいろな訪れ方があるというのは、とてもよくわかっていた。だからこそ、その日のそれが異様なまでにはっきりとしていることに、何か尋常ではないものを感じていた。 廊下の角を曲がると、その先が目で見てそれとわかるほどはっきりとした霧で覆われていた。廊下の先が見えないほど濃い霧だった。 正直なところ、その日は先を急いでいたのでそれの訪れは迷惑極まりなかったし、ぜひとも遠慮したいものだったが、それの訪れを拒むことができるものなど、いるはずもなかった。  
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