Timeless

10/55
前へ
/55ページ
次へ
   母が自販機で買ったペットボトルのお茶を手渡してきたので受け取った。これを飲み切れば空気を入れられるんじゃないかとふと思ったが、一気飲みできる気力はないので諦めた。  「ねえ、どうして私に癌のことを教えてくれなかったの?」  「みちるは心配性でしょう、考え始めるとそればっかりになるじゃない。仕事で毎日大変なのに心労増やすわけにはいかないから黙っておいてくれって言われたの。ごめんね」  「じゃあ、美雪やお父さんは知ってたの」  「そうよ。そもそもおばあちゃんの体調が悪そうだって最初に気づいたのは美雪だったのよ。それで私が病院に連れて行ったら、もう手遅れだった。癌だとわかった次の日から嘘みたいに頬がやつれて、一気に病人の顔立ちになっちゃった。ずっと胸の辺りが痛かったんだって。その時になって言うのよ。何でもっと早くに言ってくれなかったのかって怒ることもできなかった。病院にいる間も、みちるのことは気にかけてくれていたわよ。みちるは気がいい子だから、我慢してるんじゃないかって」
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加