Timeless

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  それがおばあちゃんとの最後のやりとりだった。そういえばいつも、月に何回かは電話がかかってきて、他愛のない話や、本の話をしていたのだった。仕事が多忙で出られない日が続いているうちに、いつの間にか掛かってこなくなり、そのうちLINEで時々やり取りをするようになっていたのだった。いつからちゃんと会話をしていなかったのだろう。こんなことになってしまうなら、もっと話しておけばよかった。祖父を早くに病気で亡くしてからずっと一人で生活していたけれど、高齢になっても運転も問題なくできていたし、いつも明るくてコロコロよく笑う人だったから、何となく、まだまだ大丈夫だと思っていた。家族の中で私とおばあちゃんだけが読書が好きで、子どもの頃は絵本も、児童書も、小説も図鑑も、全部おばあちゃんちにあるものを読ませてもらっていた。妹の美雪にも同じように与えてくれていたが、美雪は本よりもゲームや外遊びが好きだったのでほとんど読んでいないし、今もそれは変わらない。姉妹で趣味嗜好が全く違うので、内向的な私と外交的な妹はいつも親戚周りに比べられていたが、おばあちゃんだけは私たちを一切比べることはなく、本が好きでも、そうじゃなくても、平等に可愛がってくれていた。いつから会っていないんだろう。今年の正月休み? いや、今年は帰れなかったから、一昨年? そんなに前から顔を合わせていなかったなんて。さっきの母との会話が一つも思い出せない。死んだ理由も話してくれていたのだろうか。どの言葉にも辿り着けない。
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