Timeless

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 おばあちゃんの葬儀は密やかに執り行われた。百合の花に埋もれたおばあちゃんの小さな顔は記憶よりもずっと小さく見えた。うっすらと施されたお化粧のおかげで唇は明るく、口角は上がっていて、ちっとも苦しそうには見えなくて、ただただ眠っているみたいだった。顔を覗き込んだときに恐る恐る頬に触れたら、想像とは違う冷たさで鳥肌がたった。人の肌ってこんなんだっけ。温もりがないだけでこんなに固くてマネキンのようになってしまうのか。  目の前の静かな死から目が離せず、恐怖だか慈しみだかがごちゃ混ぜになった妙な感覚に襲われて眩暈がした。命のなくなった体は、時が止まってしまってどこにもいけないのだ。だからこうして火葬して、体という実体を捨てさせて、魂だけにしてあげるのだと思った。生きるためには肉体が必要だけれど、死んだら肉体は邪魔なのだろう。人は死ぬまで己が焼かれる痛みを知ることはない。残されているものたちが炎の色を想像し、煙の匂いを嗅ぐだけだ。  
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