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小さな記憶
家に帰ってくるとそこはいつも惨状だった。
リビングにはガラス片、食卓の椅子は壊れていて、泣き叫ぶ姉と包丁を持つ母。
黙って見ていることしか出来ない私。
其れが日常。
怒涛と罵声が飛び交い、逃げ込む姉が封鎖し使えないトイレ。
帰りの遅い父を待ち早くこの一日よ終われと願う。
自室に篭り、中途半端に閉じた赤いランドセルを投げ捨てる。散乱した中身は私の心を表すようだった。
学校からの連絡網をいつ渡すべきだろうか?
その前に漢字ドリルでも終わらせるか。
この時から求めたい愛情など貰えるはずがないのだと諦めていたのかも知れない。
父が帰ってきた。
1日を終わらせる合図。
過呼吸を起こす姉を宥める母に、心配する父。
救急車のサイレン。
話しかけても、両親が揃って言う言葉は
「お姉ちゃんが大変だから。」
分かってるけど、また一人帰りを待つのは苦痛だった。
褒めてもらいたくて100点取ったテスト用紙を、丸めるしかなかった。
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