人魚姫

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【私が話せないこと、有名なんだけど。  浅木くん、知らなかったんだね 】 そんなこと知るタイミングもなかった。 部員と話すこともなければ、 クラスメイトも特段仲のいい人もいない。 僕はどんな場面においても登場人物Dだから。 あぁ、どうしていつも僕はこうなんだろう。 暗く考え込んでいると肩をたたかれた。 【そんなに考え込んで、どうしたの?  よかったら練習付き合ってくれない?】 練習???今から? 夕方6時をとおに過ぎている。 僕の疑問をよそに先輩は上着を脱ぎ、 水に入った。 「先輩、もう遅いですよ!プール閉める時間です!」 僕の声なんて聞こえないかのように泳ぎ始めた。 なんてきれいなんだろう。 先輩が泳ぐと目が離せなくなる。 優雅に水の中を進む先輩。 50mプールを往復したころ。 彼女は僕を手招きした。 彼女の手招きに素直に応じ、プールに近づく。
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