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ライバルと言えば、アイツだけは許せない。
ちょっと目を離すと伊勢谷先輩にベタベタとくっついて、しかも、どういうわけか俺よりも可愛がられてるアイツ。
「ねぇ、桧山くん。僕、隼先輩の変な噂を聞いたんだけど。その噂の発信元が桧山くんって話、本当?」
「あ? 伊勢谷先輩の噂? 何のことだ」
「えーとね、ほんとは口にするのも嫌なんだけどー。『伊勢谷先輩の走りは、ごくごく平凡だから教わることは何もない。おまけに、ろくなアドバイスも出来ないから伊勢谷先輩にだけは頼らないほうがいい』っていう内容だよ?」
「……知らね。そんな噂、聞いたこともない。それに、ペア組んでる俺が先輩の悪口になるようなこと言いふらすわけねぇだろ」
「そっか……うん、そうだよね。隼先輩がそんな人じゃないことくらい、接してればわかるもんね。変なこと聞いてごめんね」
「あぁ」
隣のクラスから、わざわざ噂の確認を俺にしてきたヤツ。兼子智穂。マジでウザい。
伊勢谷先輩とは幼稚舎からのつき合いらしくて、気がつくと(俺の)伊勢谷先輩と仲良く喋ってる。『隼先輩』って、下の名前で気軽に呼んでる(俺は『伊勢谷先輩』呼びなのに!)。
兼子、マジでウザい。
だから……こういうヤツがいるから……俺の口からは、『嘘』ばかりが放たれていく。
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