失った重み

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何がどうなっているのかが分からない。俺は昨日何をしていた。 和樹が亡くなってから、一ヶ月近く。俺は毎日のように泣き、ほぼ身動きも取れないほど落ち込んでいた。和樹の両親にも合わせる顔がなくて、通夜にも葬儀にも参列できなかった。ただただ塞ぎ込み、昨日も同様に一日中泣き続けていたはずだ。 和樹は、確かに亡くなった。俺はこの目で見たのだ。その情景は今でも忘れていない。あれが夢だったとは思えない。 しかし、今この瞬間も夢だとは思えない。あの触れている和樹の温もりは、夢にしてはリアルすぎた。 和樹は明日が大学の入学式だと言った。 確か、入学式の前々日に和樹を呼びつけて嫌がる和樹に酒を勧めながら俺は一人飲んでいた。 あの日の記憶はほぼ酒で飛んでおり、あまり覚えていない。ただ、後に和樹に教えて貰って散々和樹を求めたことと、酷い二日酔いだったことは覚えている。 そう、今と同じぐらい頭痛と吐き気が酷かった。和樹はそんな俺に1日付き合ってくれた。二日酔いの薬を買いに行ってくれて、そのまま泊まって入学式も一緒に行ったんだ。 初めて染めた髪は淡い茶色で、直ぐに思ったのと違ったって染め直したっけ。 俺は入学に合わせてシルバーヘアーにし、その後は色んな色を楽しんでいたが、傷みすぎて一旦地毛に戻そうと暗くして、ある程度伸びていたところだった。 俺は濡らした自分の髪の毛に触れた。何度もブリーチしたような傷んだ感触がする。 先ほどの和樹は、淡い茶色の髪をしていた。自殺をしたときの和樹は、黒に金メッシュを入れていた。 そんなはずはない。ありえない。そんなことが起こるはずがない。
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