タイムスリップ

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タイムスリップ

今のこの状況が何も分からない。今日は本当にXX19年なのだろうか。 しかし、和樹が嘘を言っているようには思えないし、和樹のあの姿も俺のこの髪だってそれが現実であることを突きつけている。 俺は、タイムスリップをしたのだろうか。しかし、そんなことありえるのだろうか。 俺は、あの日いつものように泣いて憔悴しきっていただけだ。記憶にないが、泣き疲れてベッドで眠りに落ちたはず。変わったことは特にしていない。 それに、何故去年なのだろうか。もし、万が一だが、俺が過去に戻りたいと強く願ったから、神様が俺にチャンスを与えてくれたと仮定しよう。 それでも、俺が戻りたいと願ったのは和樹を襲った高校生の時だ。あそこが俺たちにとっての分岐点だった。和樹を苦しめるきっかけになったのは無理矢理抱いたあの時だ。大学入学の前日など、もう和樹を散々傷つけた後だ。 このたった1年で、3年間セックスを強要し続けてきた罪をどう償えばいい。自殺するほど苦しめていた俺に何が出来る。今更深く抉った傷をどう癒せばいい。和樹を苦しめ続けてきた俺は、一体何をすればいいんだ。 あの高校生の時に戻れていたなら、俺は正直に思いを告げて無理矢理ではなく、真正面から交際を申し出たであろう。そして、大事に大事に和樹を扱うことだろう。 しかし、今更手のひらを返したように和樹に優しくして、そんなことで許されるはずがない。和樹の心をズタズタに引き裂いておいて、好きだから縛り付けたかったなどという理由で許されるはずがない。和樹からすれば理由などどうでもいいはずだ。 俺は、和樹から離れるべきなのだろうか。それが一番の贖罪になるのだろうか。 しかし、俺が離れただけで癒されるような傷でなかったらどうなるのだろうか。今度は俺の知らないところで自殺をしてしまうのだろうか。 男に強姦されているなど、人に相談できることではない。だからこそ和樹はそれを苦に自殺してしまったのだ。俺が離れれば、和樹は誰にも相談できず、一人苦しんで、誰も知らないところで限界を迎えて自殺するのではないだろうか。 俺は、それを何としてでも阻止したい。和樹には死んでほしくない。俺の隣にいなくてもいい。俺のものにならなくてもいい。誰のものになっても構わないから、生きていてほしい。生きて幸せに笑っていて欲しい。 あの時に見た、苦痛の表情はもう見たくない。許されるならば、和樹の傍で、和樹が元気になるまで支えたい。俺がつけた傷を少しでも癒してあげたい。 これが、神様が俺に与えた最後のチャンスであるならば、その罪を償いたい。何が何でも、絶対に和樹は死なせない。
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