死亡フラグを回避していましたの。

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死亡フラグを回避していましたの。

 「さて、第一段階は取り敢えずこれで良いですの。」  泡を吹いて白目を剥き、痙攣しているワルムスを後ろに放置して意気揚々と歩き出すクリステラ。  これで結婚話は無くなりめでたしめでたし……とは成らない。  (相手はあの邪神ですの。こんな風に断っても何かしらエッグい鬼畜の所業を仕掛けてくるのは明白ですの。  例えば私の家を危機的状況に追い込んで『あの時の事は許そう。僕は君の力になりたい。』とかなんとか上から善人ムーブ周りにかまして印象操作しつつ、救済措置としての結婚を提案……とかいう絶対断れない様なクソマッチポンプを仕向けかねませんの。  放火魔兼消防士とかいう最悪の組み合わせ見せられてるみたいですの。さぁ、ここからが正念場ですの!)  一段落ついたからこそ彼女は兜の緒を締める。  戦いは未だ終わっていない。  「いやぁ……ちょっと、答えたな…………まったく、お転婆だなぁ……」  冷や汗、脂汗を流しながらなんとか立ち上がる青年の顔は少し歪んでいて、それでもなお端正な顔立ちと余裕を保っていた。  《全く訳が解らない!  いきなり人を殴るなんて、しかも〇〇を。  僕が一体何をしたというんだ?暴力なんて卑劣で愚かで、人という話し合いを得た生き物には必要無い行動だというのに!》  混乱と未だに形容し難い苦痛がワルムスの全身を内側から掻き回している。  そうして、自分が一撃を加えられる前に起きた驚くべき事象を思い出した。  《『嘘偽りの微塵も無い、自分の気持ちそのもので人には向かいます。  そう、あなたと違って……』・『私は人を自分の駒としか思っていない舐め腐れ外道男とヴァージンロード歩くなんて御免被りますの。  自分の容姿と外面に自信持つのは勝手ですけど、それだけで人をどうこうできるだなんて自惚れるんじゃねぇですの! 見てくれのいいクズは普通に『クズ』の一言で片付きますの!』  世間知らずの年中お祭り頭の御目出度い女だと思っていたけど、もしかしたら思ったよりも脅威かな?だとしたら早々に始末しなきゃいけないけど………》  思考を巡らせる。  巡る思考が他人の目に見えたとしたら、それは全て純粋で、歪みなく、淀みなく、ドス黒い色をしていただろう。  『全世界に人類はただ一人自分だけで、周囲の生き物は全て別のどうでもいい何か。』  当然自分を生かし輝かせるために他全てを使い、他はどうでもいいに決まっていて、たった一人かけがえの無い自分を大切に、よりよい状況に自分を置こうとしている。  その考えに一切疑問など在りはしない。純粋な彼の思考であった。  《無いな!これまで何度も何度も見ていたけど、そんな素振りも気配も在りはしなかった。  あんな思考の無いミミズにそこまで思考を割くだけ無駄だ。  さぁ、結婚が無理なら少し強めに財産を巻き上げる手段に移ろうかな?》  この瞬間、クリステラ=アマリリスは間一髪の所で絶命を回避していた。  「ひゃっ!なんか気持ちの悪い悪寒がしましたの!なんですの?ヤツが私の事噂でもしてましたの?縁起でもねーですの!」
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