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高二の春
高2の春なんて格好良い響きだけど、蔵森さんとクラスが離れて落ち込んでいた。同じクラスって凄く贅沢な事だったんだと思い知った。学校に行けば姿を見れ声を聞ける。それは同じクラスだからで、クラスが離れたら、偶然廊下ですれ違うとか、集会とかでもないと姿も見れず声なんて滅多に聞けなかった。戸村とは同じクラスだったからそこは良かった。
「良くない。タケちゃん」
前の席からこっちに身体を向けて弁当を食べていた戸村からのいきなりの駄目だしだ。
「最近埃被った置物になってる。」
「お風呂は入ってる。」
「そうじゃなくて、なんか世捨て人っぽい雰囲気増し増しだし。蔵森ちゃんはどうした?最近話した?」
「話もなにも」
最近、一週間前かねぇ。山口さんが化学の教科書持ってる?って訪ねてきて、その後ろに蔵森さんがいて、山口さんが蔵森ちゃんが借りたいんだってーって言って思わず蔵森さんと目があったら顔が燃えちゃってテンパりながら化学探したけど、無いっていう。謝ったらぺこりって頭下げられてその動作が可愛いくて。その瞬間を何度も脳内再生しながら蔵森さん不足を補うという。口には出さずにいると、
「なに、その沈黙。大丈夫?」
戸村が心配してくれるが、多分大丈夫じゃない。諦めるどころか、悪化の一途を辿ってる自信があった。普段姿を見れない分耐性が無いからあんな事に。
「SNS繋がってるんだから、メッセージ送って見れば?」
「なんて?」
「元気ー?とか数学どう?とか。」
「俺がそれ送るの変じゃない?」
そこで戸村は口をつぐみ、まじまじと俺を眺め、
「変だ」
と断言した。当たり障りなく出来る奴とやったらいけない奴で分ければ戸村は前者で俺は後者だ。分かってはいた。だが、はっきりと言われるとそれはそれで希望を伐採された感じだ。
「蔵森ちゃんと言えば、時々SNSのステータスメッセージで遊んでない?意味不明に元素記号並べたりして」
戸村は俺を確実に刺したことなど気にせず続けた。
「あれは解読したらやばい」
ついSNSの更新がある度にチェックはしてしまう。これぐらいしてもストーカーじゃないと自分に言い聞かせながら。
「タケちゃん解読しちゃった?あれ何?」
俺を心配してくれる戸村のために今の彼女のメッセージを解読してみせた。
「Ba、Ca、はバカ。」
「へっ?あの蔵森ちゃんが、まぁ」
「でもローマ字読みさせたり、元素の名前から持ってきたりで蔵森さんルールで適当で。
急にAlとB。これは多分アホ。Xe、Ra、Iはノリ的にキライ」
「なんでイットリビウムとかでなくてヨウ素をイにしてるんだろ」
「次のBeは多分アッカンベーかと」
「いや、あれ?ちょっと蔵森ちゃんってそんなキャラ?」
少し呆れた顔を戸村はした。俺は文集の作成でやり取りをしていたから知っている。
「彼女は意外とお茶目だ。」
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