12人が本棚に入れています
本棚に追加
締め切り日
担任からの直しが入ったりして文集の原稿ができたのは締め切りギリギリになってしまった。最後の直しをしていた彼女が、締め切り日に原稿とUSBメモリを持っていた。朝に原稿を見せてくれて終わって良かったと2人でお礼を言いあった。
放課後に会議室に提出することになって俺は当然彼女と一緒に行くつもりだった。お互い掃除当番が終わったみたいだから、声をかけようと彼女を探すと他の女子の帰りの支度を手伝っている様子だった。どうしようかと見ていると彼女もこっちを見ている。が、友人の方が彼女を手放す気がないらしい。
「待って、蔵ちゃん。先行かないで」
大声で引き止められ彼女は仕方なくまた手伝い始めた。そんな所で、戸村が
「あの様子じゃ無理じゃね。蔵森さんに提出任せて俺ら部活行っちゃおうぜ」
という。仕方なく後ろ髪引かれるような感じで教室を後にしたが、やっぱり最後まで見届けたいし、無責任な感じがして、
「戸村、先行ってて。俺、会議室で待つわ。」
現地で彼女を待つことにしたが、もう他クラスは提出し始めていた。とりあえず
『もう、提出始まってるよ』
SNSを彼女宛に入れてみる。しばらくして彼女は封筒を抱えてやってきて俺をみて驚いた感じで目を見開いたけど、すぐにニコっとした。
「ありがとう。待っててくれたんだ。」
その可愛さになんか顔面が熱くなったのをメガネを直す感じで隠しながら
「封筒の中身確認しよっか」
ごまかした。
そして封筒の表に文集委員の名前を1人だけ書く様になっていて少し2人でもめた。
「最後を決めたのは蔵森さんだから蔵森さんの名前を」
「ベースを打ってくれたのは平原さんだから平原さんで」
やり合ってる所を受け付け係の生徒会役員たちに
「そこ、いちゃつかない」
と嗜められ、慌てて俺が
「じゃあ、俺にしちゃうからね」
自分の名前を書くことにした。
無事提出が済んで会議室をそろって出た所で声をかけられた。俺ではなく彼女が。
「蔵森さん。見ちゃったよ。伊藤には内緒なのかな?俺は口軽いからなー」
他クラスの男子がニヤニヤした顔で立っていた。同じ文集委員だろうか、見覚えは無かったけど。なんかいやな感じを覚えて彼女を見たけど、位置的に背が低い彼女の頭しか見えなく表情は伺えない。
「好きにすれば」
ただ彼女の低い声が聞こえた。
相手の男子はそのままニヤニヤした顔で
「こういう系がタイプなの?へぇー。」
俺をじろじろと見始めた。こういう系?首を傾げかけた俺の左腕は突然ガシっと捕まれ
「行くよ」
という妙に男前な蔵森さんの声と同時に俺は理科室の方へ早歩きで連れていかれる事になった。
最初のコメントを投稿しよう!