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side遥
幾つかの嘘のような書き込みを辿っていく。
そして辿り着いたのは......1つのサイト。
【 ルミエール研究所 】
『貴方のお困りごとを、薬で解決致します』
そのサイトに書かれていたのは、この一言と、場所と夜にしか開いてないということだけ、詳しい事は何も書かれてない。
この手の詐欺まがいのサイトは多かったから、今度もまた同じだろうと思っていた。
思っていたのに.......
ルミエール.....光.......
今の僕には1つも見えない光。
それを取り戻せるならば........一縷の望みをかけて、僕は久しぶりに外に出る決心をした。
駿兄さんには、一緒に行って欲しいとは言えなかった。今まで、何度も希望を奪われる僕に付き合ってくれた兄さん。
もう巻き込みたくなかった.....。
『少し出掛けてきます』
その手紙だけを残して家を出た。
その場所に辿り着く頃には、もう日が傾いていた。駅を降り、タクシーに乗る。運転手もよく知らないと答える場所。
この辺だと言われ、タクシーを降りた所には、山の中へ向かう細い道があるだけだった。
やっぱり、ただの噂話だったのか.....
そう思ったのに、僕の足は何故かその細い山道へと向かっていた。
そして襲われた痛み.....。
現れた不思議な人.......。
口移しで飲まされた薬は、驚く程よく効いた。
このまま目的地まで行ってみようか....そう思える程効き目。病院で貰った薬とは明らかに違った。
でも僕は、彼に言われた通り山を降りた。
見つけた......僅かな希望。
きっと、あの山の中には僕を救ってくれる何かがある。そう確信したから。
僕は家に帰ると、心配して待っていた兄さんに全てを話した。
じっと腕を組み、唇を横に結んで難しい顔をして聞いていた兄さん。
「.....どうしても、もう一度行きたいって言うなら俺も一緒に行く。一人では行かせられない」
僕のすがり付くようなお願いに、最後はそう答えてくれた。
兄さんと2人、今、あの細い山道の前に立っている。
この先にあるのはどんな場所なのか。
あの人がもう一度僕を救ってくれる。そんな予感を胸に、僕は一歩を踏み出した。
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