81人が本棚に入れています
本棚に追加
44
side光
目が覚めて、ベットの側に置かれた毛布を見つめる。
…………夢じゃない
さっきまで、ここに遥がいた。
忘れようと、必死に努力しても忘れられなくて、過ぎていく日々にただ流されていたのに……また遥と一緒に居られるなんて
彼は決して居なくならない……
愛してるとお互い伝え合った僕達。遥が僕を強くしてくれる、そんな気がした。
あれだけ陽の光に当たったのに、次の日には熱が下がった僕。
ベットに横たわったまま、両腕を持ち上げて見る。どこも赤くなってない。身体も辛くない。
「……今は……何時だろう」
夕方まで一緒に居た遥を、兄さんからの連絡で駿さんが迎えに来た。
何度も僕を振り返って、
「すぐに逢いに来るから」
そう言って帰っていった遥。安心した僕は、もう一度寝てしまったんだ。
ゆっくりとベットから出て時計を確かめると、夜の9時を回ったところ。
部屋のカーテンを開けて、外を見る。綺麗な月が浮かんでいて思わずスマホを手に取った。
写真を撮って遥に送ると、すぐに既読になる。
『起き上がれたの?』
さっそく送られてきたメッセージ。
『うん。もう大丈夫そう。遥は?』
そう送った途端に鳴り響いた着信音。
「……もしもし」
「良かった。声も大丈夫そうだ」
安心したように、息を吐いた遥。
「……不思議なんだ。今までこんなに早く熱が下がったことないのに……肌も何ともないし。遥の風邪はどう?」
「僕は、先生の薬が良く効いたみたい。今は何でもないよ………でも、困ったことに…」
「……もしかして足?痛いの?」
「ううん。足も大丈夫」
「なんだ。びっくりさせないでよ。じゃあ何が困ったの?」
「……もう光に逢いたくて困ってる」
「………遥」
「……逢いたいよ」
「……うん。僕も逢いたい」
「……これからは、いつでも逢いに行くからね。もう我慢しないから」
遥の素直な一言に、嬉しくて顔が緩む。
「……待ってる」
これからは僕も、素直に遥と向き合いたい。自分のことを諦めるのは、もう終わりにしよう。
もう決してその手を離さないから……
なかなか切れない電話を2人で、せーのできった後、僕はキッチンに向かった。
最初のコメントを投稿しよう!